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元日本代表・藤田俊哉独占インタビュ―

欧州のスポーツIT化の現状と、CLIMB Factoryに期待すること

 

指導者の欧州組として、サッカー大国オランダでコーチを務める藤田俊哉さん。弊社のアドバイザーとして、欧州のデータ事情を中心に、様々な情報を提供してくれる方でもあります。オランダに渡って3シーズンを戦い終えた藤田さんは、スポーツデータの重要性をどう感じているのでしょうか。CLIMB Factoryのユーザーに向けて、語ってくれました。

 

――藤田さんはオランダリーグのVVVフェンロのコーチを務めていますが、チームではスポーツのデータをどのように活用しているのでしょうか?

オランダでコーチをしていて感じるのが、主観的な話をしても、相手はあまり聞いてくれないということです。データのような客観性のあるものを持ち出して説明しないと、納得してくれないんですね。それはオランダ人の気質なのかもしれません。一方で日本人の場合、感覚的な話が通じる部分が多いですよね。オランダ人の気質と日本人的な考え方のギャップを埋めるために、データを活用しています。

 

――オランダにはスポーツデータを受け入れる土壌があるのですね。

そう思います。ただ、中にはデータが嫌いというか、持て余してしまう選手もいるので、そこはケースバイケースで、選手のキャラクターや反応を見ながら、データを使ったりという感じです。日々、データと接して思うのが、データを積み上げることの重要性です。サッカークラブでよくあるのが、コーチが変わったら、データの取り方やとる項目が変わってしまうこと。結果として、そのコーチがいなくなってしまうと、チームにはデータが残らない。そうではなくて、データはクラブ自身で管理するものだと思います。例えるなら図書館のようなイメージで、過去の選手のデータをクラブが保管します。そうすると選手の現在と過去のデータを照らしあわせて、成長の記録を確認することができますし、若手選手の成長のヒントを得られることもあると思います。

VVVフェンロが過去に獲得したタイトルの数々

 

――藤田さんがコーチを務めるVVVフェンロでは、どのような選手データを採取していますか?

シーズンが始まる前に、スプリントやアジリティ、ジャンプといった項目のデータを採取します。シーズン中にも同じ項目を3、4ヶ月に1度とることで、コンディションが良いと感じているときの数値と、実際のイメージとをすり合わせてコンディションづくりに役立てていきます。なかでも、疲労回復のトレーニングをするときには、ひとつの目安にしています。レギュラーで毎試合フル出場している選手と、途中出場であったり、ベンチに座ることの多い選手とでは、出場試合数が違うので、蓄積された疲労も違いますよね。そこで、データを見ながら疲労しているのか、余力があるのかをチェックしていきます。コーチからすると、自分の目で見たことだけでなく、データという数値の視点からも選手の状態を測ることができるので、すごく役立っていますね。その半面、いまの選手たちは僕の現役の頃と違って、色々なデータで見透かされてしまうので大変だと思いますが(笑)

 

――ヨーロッパの多くのクラブは、指導現場レベルでのIT化が進んでいるのでしょうか?

僕の知る限りですが、オランダリーグに関して言うと、コンディション面と戦術面に関してはITを使っています。それ以外の部分をどこまでカバーするかは、チームの資金力にもよります。コンディション面では、練習時に心拍数を測ったうえでトレーニングメニューと心拍数を照らしあわせ、回復する速度を考えたりしていますし、これくらいの強度のトレーニングをしたら、これくらいの疲労として身体に残るというのをデータとして採っています。あとは走行距離、走行エリア、走行速度なども計測しています。戦術面のデータ活用としては、練習場にカメラを設置して、すべてのトレーニングを撮影しています。その映像を見て、選手にポジショニングの指示を出すこともあります。フェンロの練習場にもカメラがあって、練習を録画しています。選手はそれをスマートフォンで見て、活用しています。

 

当社スタッフとフェンロコーチのミーティング

 

――藤田さんを始めコーチングスタッフは、トレーニングで採取したデータをどのように役立てていますか?

2週間に1度コーチが集まって、選手の状況を話し合う場があります。そこでデータを見ながら「この選手は疲れ気味だから休ませよう」といった話をしています。ただ、そこに関してはデータを鵜呑みにするのではなく、肌感覚も交えて決断しています。データとマッチングして、ベストの状態を探っていく作業です。データは多いに越したことはありませんが、それをどれだけ活用して、選手に効果的に伝えるかがコーチの腕の見せ所だと思います。選手によっては、データを嫌う人もいます。選手の意見を聞かずに「データにこう出ているから」と押し切ると、選手に嫌われてしまいますよね(笑)。データを元にどう判断するか。選手との対話に説得力を出すために、データを使ってディスカッションをするとか。そのさじ加減が大切だと思います。

 

――CLIMB Factoryでは『CLIMB DB』という選手管理システムを提供しており、スマートフォンの専用アプリから情報を入力できるようにすることで、選手のコンディショニングに役立てています。小学生でも手軽に入力ができるので好評を頂いているのですが、プロサッカー選手をめざす子どもや、保護者の方にアドバイスを頂けますか。

あるイベントで出会ったお母さんに、こう言われたことがあります。「うちの息子は、同年代のトップの子と比べて、レベルはかなり落ちます。でも本人はサッカーが好きで、情熱をもって取り組んでいます。プロになれるかはわかりませんが、どうすればいいでしょうか?」と。僕はサッカーに30年以上関わってきて、小学生のときに「天才少年」と言われた人が、年齢が上がるに連れて消えていったケースをたくさん見てきました。反対に、小学生時代は無名でも、努力をして日本代表になった選手も多くいます。そのため「お子さんが情熱をもって取り組んでいるのであれば、応援してあげればいいのではないですか」と言いました。子どもは、どこでどう変化するかはわかりません。だから、親が子どもの可能性を決め付けないほうがいいと思うんです。そういうときに、いまプロになった選手の少年時代のデータをとっていて見ることができれば、「この選手は小学生時代、こうだったんだよ」という話ができますよね。そのためにも、データを取得して蓄積させることは意味のあることだと思います。

 

――最後になりますが、今後、弊社に期待することがありましたら教えてください。

イベントなどでよく保護者の方に「どんなトレーニングをして、どんな食事をすればいいのですか?」と聞かれます。いまは僕が子どもの頃に比べて、格段に情報が増えていますが、手探りでやっている方もたくさんいます。そういう人たちに向けて、手助けしてくれるようなアプリがあるといいですよね。知識がある人であっても、これでいいのかなと不安を感じている人もいると思うんです。そういう人が確認の意味を持って見られるような情報を提供していくことが、みんなにとって有意義だと思います。スポーツをより楽しめて、結果が出て、健康になってと、みんながハッピーになる方向に持っていくこと。CLIMB Factoryさんにはそれを期待していますし、僕もアドバイザーとして、力になれればと思います。(了)

 

 

プロフィール

藤田俊哉(ふじた・としや)

1971年、静岡県生まれ。筑波大学卒業後、ジュビロ磐田に加入すると、1年目からレギュ ラーを獲得。ステージ優勝6回、年間優勝3回に貢献。2001年にJリーグMVPに輝くなど、ジュビロの黄金時代を作り上げた。2003年にはオランダ1 部リーグのユトレヒトにレンタル移籍し、14試合に出場して1ゴールをあげた。2005年に名古屋グランパスに加入して日本に復帰。以降、ロアッソ熊本、 ジェフユナイテッド千葉を経て、2012年に現役引退。2013年より、オランダ2部リーグのVVVフェンロでトップチームのコーチを務めている。