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2025.12.02

DXハイスクールが実現する次世代スポーツ教育。鳴門渦潮高校のデータ×アスリート育成

【活用事例】#61 DXハイスクール 鳴門渦潮高等学校

目次

徳島県内で唯一、「スポーツ科学科」を持ち、全国大会の常連校として知られる鳴門渦潮高校。

同校は、文部科学省「DXハイスクール」採択校として、教育とスポーツの両面からデジタル化を推進してきました。

Atletaをはじめ、GPSや動作分析ツールなどを導入し、選手の体調や練習をデータで“見える化”。
さらに、県内高校へも活用の機会を広げ、地域におけるスポーツDXを先導する存在となっています。

テクノロジー、教育、そしてアスリート育成。
三つを融合させた、未来志向の取り組みに迫ります。

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スポーツ科学科と総合学科の二学科制で広がる、鳴門渦潮高校の学び

鳴門渦潮高校の特徴を教えてください。

本校は、徳島県内で唯一「スポーツ科学科」を設置しており、「総合学科」とあわせた二学科制の県立高校です。

「スポーツ科学科」では、スポーツや健康に関する専門的な教育を行い、トップアスリートの育成や地域のスポーツ人材の育成を目指しています。専門的な授業を通じて、競技力の向上だけでなく、スポーツ科学分野の知識や実践的なスキルを身につけた生徒を育てています。

一方の「総合学科」では、情報通信・福祉・商業など5つの系列から自由に科目を選択できるカリキュラムを導入し、生徒一人ひとりの興味や進路に合わせた多様な学びを実現しています。社会の即戦力として活躍できる人材の育成を目的とし、県内でも最も幅広い選択科目と授業時間数を備えているのが特徴です。

学科構成は1学年あたりスポーツ科学科約60名、総合学科約120名。生徒それぞれの目標に応じて、専門性を高めながら成長できる環境を整えています。
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それぞれの学科選択は入学前に選択するのでしょうか。

はい。スポーツ科学科については100%推薦による入学となっています。
また、スポーツ科学科のみ県外枠を25名設けており、県外からの入学者も一定数います。県外からの生徒には学生寮を提供しています。
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鳴門渦潮高等学校では全部でいくつの運動部がありますか。また各競技の成績についても教えてください。

全部で8競技(陸上競技・女子サッカー・男子バスケットボール・男子硬式野球・柔道・男子剣道・ウエイトリフティング・女子ラグビー)があり、全国大会に出場する競技も多くあります。
直近では野球部が甲子園に出場し、陸上とウエイトリフティングでは全国チャンピオンも誕生しました。女子サッカー部も2019年のインターハイで準優勝を果たしています。卒業後も、大学進学やプロ選手として活躍する卒業生が多数います。
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DXハイスクールが実現する“データで学ぶ”スポーツ教育

今年度DX加速化推進事業※の採択校に選ばれましたが、具体的にどのような取り組みをされているのかを教えていただけますか。

※2024年度から開始された文部科学省による「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール) 

「生徒が自身の課題を解決するために、デジタルツールを駆使して学習環境を変えていく」ことを前提として、本校ではさまざまな取り組みを進めています。

具体的に導入した機器・ツールとしては、
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などがあります。

これらのツールを活用し、試合データや動画分析に加えて、栄養・トレーニング計画を統合的に管理する取り組みを行っています。トップアスリートに近い環境を整備することで、競技力の向上と教育DXを両立させています。
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測定機器などは他校の生徒も使用できると伺いました。

競技にもよりますが、県内の高校から希望があれば、本校で測定の機会を設けています。
こうした取り組みを通じて、鳴門渦潮高校が県内の“スポーツ科学・データ活用の拠点校”として取り組みを進められているのは嬉しいことだと感じています。
自校だけでなく、地域の高校とも協力しながら、スポーツ科学やDX教育の輪を広げていけることが本校の特色だと思います。
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これらのツールを導入したことで、生徒たちからはどのような反応がありましたか。

導入当初はツールの使い方やデータの取り扱い方法が分からず戸惑いもありましたが、今後は得られたデータをどのように活用していくかが課題になってくると思います。
現在は、徳島大学や鳴門教育大学と連携し、スポーツ科学の面だけでなく、デジタル技術の教育・研究への活用も進めています。
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科学的アプローチで“走れない原因”に迫る環境づくり

DXハイスクール事業を推進される中で、今年度から『Atleta』を導入いただきましたが、導入の背景を教えてください。

当初は女子ラグビー部で別のコンディション管理ツールを使用していましたが、運用する中で「栄養面のデータ不足」や「食事管理まで一元化して改善したい」という課題が明らかになりました。そこで、カロリー計算や栄養分析機能を備えた『Atleta』の方がチームに適していると感じ、採用しました。
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食事面については当時から気にされていたのでしょうか。

はい。食育研究の一環として、徳島大学の教授と「ビタミンD」と「筋肉量」に関する共同研究を行っており、その際に選手全員の食事データを取得しました。その結果、「朝食を抜く生徒が多い」「エネルギーや水分の摂取量が不足している」などの課題が浮き彫りになりました。

データを基に、食事・トレーニング・パフォーマンスを結びつけて改善していく必要性を感じたことが、『Atleta』導入の大きなきっかけになりました。
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『Atleta』で取得したデータはどのように活用していますか。

GPSデータと栄養データを組み合わせることで、「走れない原因」を科学的に分析するなど、仮説検証型のアプローチを進めています。

また、水分摂取と尿の濃さ・量、血液検査の結果などもあわせて活用し、水分不足がパフォーマンスに与える影響を研究しています。
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研究結果、原文はこちらから
Assessment of water balance in high school athletes and non-athletes
>続きを見る
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“自己管理できる選手”を育てる、トップアスリート育成の考え方

最後に、御校の今後の目指す姿を教えてください。

さまざまなツールで得られた客観データと、『Atleta』で記録する主観データを組み合わせることで、選手自身が「自分の身体の状態を見える化し、自己管理する力」を養ってほしいと考えています。

単に「食べれば良い」や「痩せれば良い」「練習すれば良い」ということではなく、体調・栄養・パフォーマンス、さらには月経周期なども含めて総合的に理解することが重要です。

その中で「感覚と実際のデータのズレ」を把握できる力を身につけることが、アスリートとしての成長につながると思います。
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単なる記録や管理ではなく、選手の“気づく力”そのものを育てていきたい、ということですね。

そして、こうした経験を通してトップアスリートとしての能力と資質を高めるだけでなく、将来的にはそれを他者に伝えられる人材になってほしいと考えています。

言われたことをやるだけでなく、部活動や学科での学びを通してスポーツの理解を深め、スポーツの面白さを感じながら卒業してくれることを願っています。
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鳴門渦潮高等学校(なるとうずしお)
スポーツ科学科主任 中嶋 宏彰(なかじま・ひろあき)

<チームの情報>2025年11月現在
学校全体での利用
Atleta導入時期:2025年4月