キーワード:

2025.08.15

「郵便」と「駅伝」は、想いをつなぐ。 強さの原点にある、チームと指導者の信頼関係(前編)

【活用事例】#59 陸上競技 日本郵政グループ

目次

今回お話を聞いたのは実業団の中でも屈指の実力チームである日本郵政グループ女子陸上部です。

人々の想いのこもった手紙を届ける「郵便」と、タスキを繋ぐ「駅伝」との親和性を原点に、髙橋監督が作り上げたチームが結果を出し続ける理由には、選手とスタッフ間の信頼関係と、勝ちにこだわりすぎない監督独自の指導理念がありました。

常識を覆す、優しくも芯の強いチーム作りの根幹が見えてくるインタビューを前後半に分けてお届けします。

blank image

郵便と女子駅伝の親和性とAtletaの有効性

日本郵政 女子陸上部の成り立ちを教えて下さい。

2007年の郵政民営化をきっかけに、民間企業として新しい取り組みをやろうとした中の一つに企業スポーツをやってみようという話が持ち上がりました。 議論を重ねていく中で「手紙を届ける郵便と、タスキを繋ぐ駅伝」に親和性があることから、長距離チームがいいのではないかということになり、郵便局に来られるお客様やフロントラインの従業員も女性が多いことから、女子のチームがいいとなり、2014年に駅伝を中心とした女子陸上部が生まれました。
avatar 髙橋監督

郵便局ならではの特徴とも合い、陸上部が誕生したのですね。

創部に当たりまず始めたのが指導者探しだったそうです。当時、私はそれまで所属していたチームが休部となったことで新しい行き先を探していました。そんな中でタイミングよくお声がけをいただき、2013年5月に採用されて本格的な創部準備に取り掛かりました。全てがゼロからのスタートだったので、最初は本当に大変でした。
avatar 髙橋監督

創部当初の苦労を経てここまでの強豪チームを作り上げたのですね。現在のチーム体制を教えて下さい。

現在は、監督の私、齋藤ヘッドコーチ、比企チーフコーチ、玉城コーチ、澤口マネージャー、荒マネジャー、安里管理栄養士、後藤栄養士のあわせて8名の現場スタッフと、15名の選手たちが在籍しています。
avatar 髙橋監督

今年入部された選手の中には大学時代にもAtletaをご利用いただいていた選手がいらっしゃいますね。

はい。Atletaを使っていたことを知っていたので、大学時代の監督、コーチ、そして本人の許可を得てデータを引き継がせてもらいました。遡って情報を調べられるので助かりました。手書きの練習日誌だったら渡されても読み切れないし保管にも困るので、データでの持ち込みはとても助かりました。じつは今私はアメリカのコロラドで合宿中ですが、Atletaだと海外にいても選手からの報告を簡単に確認することができますし、スタッフ全員が同じタイミングで情報共有できるので非常に良いツールです。
avatar 髙橋監督

海外からだと手書きの練習日誌はチェックできないですよね。

今でも他チームの指導者がホテルのフロント等で選手の練習日誌をテーブルに積み上げてチェックされている様子を見ることがあります。 もともとはうちも手書きの日誌を使っていましたが、創部2年目から鈴木(亜由子)のような日本代表選手が出てきた中で、私も海外に行く機会が増えまして、チーム本体とは別行動となり、日々選手全員の日誌を確認することが難しくなりました。その当時選手の練習日誌をどうして確認していたかと言うと、日本にいるスタッフから選手の日誌をスマホで撮影してもらい、私は海外で合宿している選手の日誌を撮影して、スタッフ内で送り合って共有していたんです。
avatar 髙橋監督

かなり手間と時間がかかる作業ですね。海外からだと特に大変そうです。

スマホの容量はいっぱいになりますし、小さい画面で見るのも大変でした。

もちろん手書きの大事さも分かるんです。紙だからこその温かさとか、気持ちが文字に現れたりとアナログならではの良さがあります。そういう意味で最初はAtletaの導入には悩みました。
ただやってみて、もし使い勝手が良くなかったら辞めればいいと思って導入し、現在に至っています。
avatar 髙橋監督

結果的に導入から8年目が経ちまして、長く使っていただき、ありがとうございます。

トラック、マラソンシーズン中は別々の拠点で活動することも多いので、ネット環境さえあれば時差関係なくデータを登録できるし、確認もできる、何より重たくないのが良いですね。
avatar 髙橋監督
blank image

コンディションコメントを通して選手ごとのタイプが見えてきた

Atletaでは具体的にどのような項目をチェックされていますか。

私はコンディションのコメント欄を見ます。コメントの言い回しとか、表現に選手の心理状況が現れるので、一番見ていますね。
avatar 髙橋監督
監督同様にコメント欄はスタッフ全員がそれぞれチェックし、コーチ陣が週替わりで分担して返信コメントを記入しています。会った時に体調のことを報告していなかったとしても、Atletaには記録している選手もいます。
またAtletaは月経管理もできるので、そのあたりは私はよく見ています。あとはサプリメントのチェックでしょうか。服用しているかどうかの確認や、血液検査の結果を基に摂らせる量を調整しているので活用させていただいています。
avatar 齋藤HC

選手の細かな体調やコンディション管理に『Atleta』が役立っていると聞くと、本当に嬉しいです。

さらにはチームの管理栄養士、時には主治医の先生方と連携して、血液の情報やサプリメントの状況、体重、体脂肪といった情報を出力して、選手と面談しています。体重や体脂肪のグラフは、我々だけでなく選手自身もよく見ているようです。
avatar 齋藤HC

これまでコメントを通して気づけた選手の心理状況や行動変容などありましたか。

大卒の選手は自分の考えを文字にして伝えてくることが少ない傾向にありますが、高卒の選手はかなり詳細に報告をしてくれます。コメントからかなり選手の心理状況が読み取れるので、配慮しながら、コメントを返すようにしています。
avatar 齋藤HC

コミュニケーション面で意識していることはありますか。

何気ない普段の雑談を含め、普段の選手との会話や、チームの雰囲気作りはスタッフで連携しながら行っています。うちにはいろんなタイプのスタッフがいるのが特徴で、ゆえに選手も上手に使い分けて相談に来ているように思います。例えば何か決断をしないといけない時は決定権のある私のところへ相談に来たり、女性スタッフの方が相談しやすい時は女性スタッフに相談に行ったりと。
avatar 髙橋監督
逆に女性陣に言うと厳しい回答が返って来そうな内容だったら、男性スタッフに優しさを求めて相談していると思いますよ(笑)
avatar 齋藤HC
そういう意味で、うちのチームの特徴って男性と女性のスタッフが均等にいることなんです。これはじつは珍しいことで、このバランスが本来女子のチームには大事なのではないかと思っています。
avatar 髙橋監督

確かにスタッフが男女均等にいらっしゃるのは珍しいですね。

私は良いチームを作るにはスタッフのバランスとチームワークが最も重要だと思っていて、まずはスタッフ間がしっかりとまとまっていること。それぞれが意見を持ちつつお互いの役割をきちんと担うこと。そして何よりもスタッフ全員が同じ方向を見て選手に接することが大切だと思っています。
avatar 髙橋監督
blank image

日本郵政グループ女子陸上部の強さの背景には、選手やスタッフそれぞれの思い、そして独自の視点がありました。
後半では、4度の優勝を成し遂げた舞台裏や、実業団チームとしての地域との関わり方、そして未来への展望についてさらに深く掘り下げていきます。
ぜひ、後編もご覧ください。

article
後編はこちら
「優勝するぞ」とは言わない。 心と体に“余裕”を残す、日本一チームの育成論(後編)
>続きを見る

日本郵政グループ 女子陸上競技部(にっぽんゆうせいぐるーぷ)
髙橋 昌彦 監督
齋藤 由貴 ヘッドコーチ

<チームの情報>2025年6月現在
メンバー:16名
管理者:10名
Atleta導入時期:2018年10月

<チームの主な成績>
クイーンズ駅伝:初出場の2015年以降、2024年まで10年連続出場。
2016年、2019年、2020年、2024年と計4度の優勝を達成。