走ることを、ずっと好きでいてほしい。3年間故障ゼロを目指す、長距離育成のリアル戦略

#64 陸上競技 水戸葵陵高等学校 澤野 敦 監督

走ることを、ずっと好きでいてほしい。3年間故障ゼロを目指す、長距離育成のリアル戦略

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2026.03.03

目次

茨城県内でも着実に存在感を高め、全国の舞台にも歩みを進めた水戸葵陵高等学校 陸上競技部。

その裏側には、選手の“感覚”と“データ”を両立させた、常に選手ファーストのチームづくりがありました。
長年「Atleta」を活用してきた澤野敦監督に、指導哲学と具体的な活用法、更には独自の練習法までたっぷり語っていただきました。

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正直に言えるチームが、ケガを減らす

2018年からAtletaをご利用いただいていますが、長く続けられている理由は何ですか。

選手それぞれに練習メニューを細かく分けているので、主観的な調子を知るためにAtletaが必要になっています。Atletaに記録された情報と、自分の目で見た様子とを合わせて、練習メニューの管理ができるので、すごく役に立っています。
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導入当初から今までで、Atletaの使い方が変わった点などはありますか。

特には変わっていませんが、以前は大きな大会前になると正直に入れてくれない選手が多かったんです。痛みを報告すると外されちゃうんじゃないかって思われて。
なので、長年使う中でAtletaの使い方を変えたというよりは、自分の選手との接し方を変えていった方が強い感じですかね。何でも話してもらえるような関係性を作るようなるべく努力しました。普段からの話しかけ方を工夫したり、正直に話すことのメリットを伝えたりして、最近は割と正直に報告してもらえるようになりましたね。
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正直に報告してくれない点については、他の指導者も悩まれている方多いですね。

本当に細かいんですけど、最初の頃は敬語でコメントしていました。そこをあえて最近は友達に話しかけるような感じに、語尾を変えてみたんですよ。それが実際効果的だったのかは分かりませんが、だんだん素直に言ってくれる選手も増えた気がします。
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そういった細かい部分が、選手と監督との距離を近づけたんだろうなと感じます。

もちろん『ケガすることが一番駄目だ』と言い続けている部分もあると思います。ケガ予防のために練習をストップすることは全然悪いことじゃない。それを伝えるためにAtletaをやっています。
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ケガをしていても無理しちゃう選手はいるでしょうから、練習を止めることを伝えるのは重要ですね。

日本人は真面目な子が多いですよね。周りが練習してると自分も練習しなきゃ…と考えてしまう。私は歩けないほどのケガの場合は練習に来なくてもいいと伝えていて、家でゆっくり過ごしてほしいのですが。
それでもちゃんと練習に来て『できることやりたいです』と言ってストレッチや筋トレをやるのですが、結局それで回復が遅れているんじゃないかなって。単純に摂取した栄養が故障部位の回復の為でなく筋トレで傷んだ筋肉にいっちゃっている気がして、完全に休んだ方が回復も早いと思いますね。
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走らせるのではなく、“止める”ためのGarmin

Garmin連携の機能もご利用いただいていますよね。

そうですね。基本は全て直接走りを見ていますが、長期休み期間とか、見ていないところでのデータが自動で取り込まれるようになったのですごく良いです。
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選手たちには普段から距離を走るように指示しているのですか。

練習量自体は少ない方で、ありがたいことに選手たちは私の指示以上に走るんですね。練習量少なくしているのはそこが狙いでもあります。選手たちが自発的に朝や練習後に走ろうと思えるようにやっていて、私はむしろ走るのを止める側なんです。
Garmin連携で走行距離が見えるのは自発的な選手にとっては監督へのアピールになりますし、私もやり過ぎと感じる選手のことを早く気付けてアドバイスができるので、GarminのデータをAtleta上で確認できるのはとてもありがたいです。
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先程のケガの話にも通じますが、選手とのコミュニケーションで信頼関係ができているからこそ、自主的に練習できる選手たちが多い印象ですね。

でも、私が15〜16年前に同じような指導ができていたかと言われると多分あんまりできていなかった気がするんですよね。
ケガした選手を帰したら、そのままもう来なくなっちゃうんじゃないかとか、練習来ないで休んでいいと伝えたらもうそのまま陸上やらなくなるんじゃないかとか考えていたと思います。
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考え方が少しずつ変わっていったんですね。

どの大学に行っても活躍できる選手になってほしいなと思っています。大学では自分で自分の活動の線引きをできないとやっていけませんからね。
親に怒られたくないから走るとか、監督が怖いから走るとか、他人の顔色をうかがいながら走るようでは駄目で。自分が必要と感じるなら走る、必要なら休む。今日のコンディションに合わせて選択することを大事にしないと、将来伸びていかないので、その自分の振り返りでもAtletaがすごく役に立っているなと思っています。
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そういったことも日々選手たちに伝えていらっしゃるんですね。

振り返りの重要性も特にそうですね。中には単純に練習内容の報告文だけになっていることもありますが、後で読み返した時に、自分の取り扱い説明書みたいになっていれば良いなと思っているので、とにかく自分のために入れなさいと伝えています。
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先程の語尾や言い回し以外で、選手からのコメント、リアクションをする際に澤野監督が意識されていることはありますか。

コメントに要望や意見を書いてくれることがあります。選手からあがった声はよっぽど方向が違わない限りなるべく採用してあげて、翌日の練習に反映させるようにしています。
書いたことがちゃんと読まれていると伝わりますし、書いた意見が自分のためになった経験をすると、コメントを書くことへのメリットを感じることができますからね。
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「前年の記録」を、今年の優勝ラインに変える

Atletaでは具体的にどういったデータを注視されていますか。

週間の総走行距離を入れてもらっていて、今週と前週を比較したり、直接選手の様子を見て、明らかにスピードが出せていないと感じた場合は、数字と照らし合わせながら走りすぎていないかを確認したりしています。
あとはやはりコメントですね。選手自身の感覚的な部分はみんな書いてくれるので、調子の良し悪しをコメントを通じて把握することができます。
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スケジュール機能の使い方がとても良いなと感じているのですが、教えていただけますか。

スケジュールには大会予定などを入れているのですが、そこに前年の大会結果を載せていて、このぐらいで走ったら優勝できるといったことを早い段階から意識させています。
また、大会直前の練習で何をやったのかというものも残していて、前回大会どんな準備をしたか、○日前はこんな練習をやっていたとか振り返りやすくしています。これによって大会に向けた準備の意識やモチベーションを高められるし、更に下級生にとっても、先輩たちがどんな準備をして大会に臨んだのかも分かるので、過程と結果の情報はスケジュールに残すようにしています。
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派手さよりも積み重ねを。変わらない軸が強さを生む

澤野監督が思う、長くAtletaを続けられるチームとはどんなチームだと感じますか。

練習とかも含めて一貫性が一番大事だと思っていて、うちって同じ練習を年間で何回もやるんですよ。同じ練習を繰り返すことで、選手自身が『前より伸びたな』って成長を感じやすいと思っています。
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チーム方針そのものが、Atletaの利用とマッチしたのですね。

そうですね。新しいことを次々やることもすごく良いことだと思っています。飽きないですし、新鮮な刺激の方が高いトレーニング効果を得られるみたいな話も以前何かで読んだこともあります。
それよりもうちは同じことを年間通して何回もやって、先月よりも今が良い、去年よりも今が良いという感覚をワンパターン練習で感じ取れるようにすることが調整意欲の高さに繋がると思っています。
そういう積み重ねを大事にしている結果が、Atletaの利用にも繋がっていると思います。
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何か他にも続けていることはありますか。

ある練習方法のやり方が結構変わっていて。長距離走の練習でペース走というのがあるのですが、普通は一定のペースで休まずある程度の距離、8キロとか12キロとかを走り続けるって練習がありますが、うちは途中休みを入れながら区切ってやるんですよ。
普通は走り続けないと効果が薄いと思われるのですが、実は休みを入れながらやった方が、フォームが良くなったり、故障のリスクを減らせたりするんです。それでいて心拍データを見ても、通常のペース走の効果とあまり変わらないので、その練習をかなり昔から取り入れています。
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勝利至上ではない。それでも強いチームの理由

今の話からも、あくまで選手のフォーム改善や故障を減らしたい澤野監督の意思が練習に込められているなと感じます。

それはありますね。とにかく3年間できるだけ故障なく継続して練習することが一番大事だと思っています。普段の練習のペース設定も他のチームから驚かれるくらい遅いですよ。大会が近づいても特別強度は上げないです。
結果は後からついてくるものだと思うので、まずは部員全員が無事に大会に参加すること、そしてケガなく健康に3年間を過ごすことが大事。それでチームの目標達成につながることがベストです。でも勝つことを第一にしないようにしていて、これは入学する時、選手の保護者にも必ず話しています。
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練習強度は低くてもコツコツ積み重ねて練習ができる選手が、結果を出す選手になるんでしょうね。

先程もお話した通りある程度自分でプラスしてくれることを前提の練習量になっています。
闇雲に走れというわけではないですが、余裕があるのであればもう少しだけ走ってみるか、早く帰ってリカバリー重点を置くかといった、練習以外の時間の過ごし方を自分自身で選択できる選手が伸びると思います。
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がむしゃらに練習をするのではなく、自分で何がベストかを判断できる選手が強いということですね。

チームとして何か特色を出していかないと生き残っていけないなと思っていて。茨城県内には多くの素晴らしいチームや尊敬できる指導者の方々がいらっしゃいます。そんな中だと少し気を抜いただけで順位が下がってしまいますし、他のチームに負けない水戸葵陵カラーを出していかないと、これから入ってきてくれる中学生にも選んでもらえないので、こういった独自の方針や考え方は大事にしていきたいです。
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競技を“長く愛せる”選手を育てたい

水戸葵陵陸上競技部の監督として今後どんな選手がチームに入ってきてほしいですか。

今年の3年生が全員卒業後も陸上競技を継続してくれるんですけど、私としてはこれが一番嬉しくて。
やっぱり長く競技をやってもらいたいんですよ。だから本当に走るのが好きな子や、練習をコツコツ続けられる子が選んでくれると良いなと思います。
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最後に今後の目標を教えてください。

選手たちは『もう一度全国高校駅伝に行きたい』と言って毎日練習を頑張っていますので、そこを目指すのはもちろんですが、まずはみんながケガなく、普通に成長していくこと、故障者ゼロで力をつけてもらうことですね。それから全国駅伝出場がついてきてくれるといいなと思っています。ゆくゆくは今年の3年生たちが本気で目指してくれた全国8位入賞を達成してみせます。
あとは箱根駅伝ですね。今3年連続で卒業生が走っているので、これからどんどん増えていってほしいなと思っていますし、そういった高いレベルにチャレンジする選手が水戸葵陵から生まれていったら嬉しいです。
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水戸葵陵高等学校 陸上競技部(みときりょう)
澤野 敦 監督(さわの・あつし)

<チームの情報> 2026年2月現在
メンバー:32名
管理者:2名
Atleta導入時期:2018年2月

水戸葵陵高校 駅伝部 instagram
@mitokiryo_ekiden

<チームの主な成績>
第77回 関東高等学校駅伝競走大会  8位入賞
2025年度 茨城県高等学校駅伝競走大会 4位
第75回 全国高等学校駅伝競走大会  出場
2024年度 全国高校総体 5000m 出場
2024年度 茨城県高等学校駅伝競走大会 2位
2023年度 茨城県高等学校駅伝競走大会 4位

卒業生の活躍
小田 恭平(大東文化大学→ NTT西日本)第100回、第101回 東京箱根間往復大学駅伝競走
長谷川 豊樹(日本大学)第101回 東京箱根間往復大学駅伝競走出場
井坂 光(東京農業大学)第102回 東京箱根間往復大学駅伝競走出場