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2022.03.23

自己分析を続けることの大切さ。強い選手を育てるダイソー女子駅伝部の秘訣とは

【活用事例】#31 駅伝競走 ダイソー

目次
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2019年創部から飛ぶ鳥を落とす勢いで結果を残している実業団のダイソー女子駅伝部。クイーンズ駅伝出場を目標の2年前倒しで達成できた要因の一つに、トレーナーによる献身的なサポートと『Atleta』によるコンディション管理、密なコミュニケーションがありました。

今回お話を伺ったのは、ダイソー駅伝部の酒井はるかトレーナーです。実業団ならではの『Atleta』活用方法や、若い世代のアスリートが大切にすべきことなどを伺ってきました。

『Atleta』の記録からトレーナーの介入効果を可視化

主にコンディション機能をご利用いただいていますが、トレーナーの立場で特に気にされている項目はありますか。

記録されている内容については全て見るようにしていますが、特に気にしているのは『身体の気になる部位』です。
どうしても身体のどこかに痛みを持っている選手が多い中で、日ごとの痛みの変化や、その痛みが走れる状態なのかどうかといった選手の主観的情報は常に気にしています。
あとは『身体的疲労』『精神的疲労』といった項目も用意しているので、そのあたりが高い数値で続いている選手には直接声をかけて深い話をするようにしています。
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ケアする際の判断材料として見るのでしょうか。

そうですね。選手によって痛みの感じ方の程度が違うので、実際の状態と選手の感じ方の相違をチェックしています。
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データがあるとないとでは、ケアの仕方は変わりますか。

例えば肩が痛い選手がいるとして、『ものすごく痛い』と言われるより、『Atleta』で『10段階のうち7の痛さです』と表現してもらえる方が、治療を重ねるごとに痛みの数値変化が見え、変化の度合いによってアプローチの仕方が変えられて、継続的にトレーナーとしての介入効果も見えるのでとても良くなったと思います。
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注視するのは『身体の気になる部位』『身体的疲労』『精神的疲労』
数値で痛みを表現してもらうことで、治療を重ねるごとに痛みの数値変化がわかり、変化の度合いによってアプローチの仕方を変えることができる。

選手が自分で考えられるツールを増やせるようなコメント返信を心がけている

コメント機能をご利用頂いていますが、やり取りの中で意識されていることはありますか。

選手たちは毎晩入力しているので、私は寝る前に返信しています。コメントの書き方も選手によって違うので、選手それぞれがその日感じたことをどんな表現で記しているかをチェックしています。
例えば集団走練習で離れてしまった選手がいたとして、その選手はコメントにネガティブなことだけを抽出して書いてしまうんですね。そんな選手には『ここまではできたよね』とポジティブな面やタイムを伝えて気づかせてあげるようにしています。
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落ち込んでしまっている選手にポジティブなコメントを返してあげるんですね。

そういったやり取りを続けることで、『これがダメだった、ここもダメだった』みたいにネガティブな内容しか書かなかった選手のコメント内容が変わってくるんですよ。『ここはダメだった。だけどここは良かった。次からこうしよう…』といった感じに。
あとは抽象的なコメントは具体的書いてもらうようにしています。『なんか動きが悪かった』みたいな表現の選手には『何が悪かったと思う?』と私から問いかけることで『腕の振りがしにくかった、呼吸が入りにくかった』といった具体的な内容で答えてもらって、私からも具体的な提案をしています。
とにかく、選手が自分で考えられるツールを少しでも増やしてあげられるようにコメント返信は心がけています。
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『Atleta』のレポートも自身で考えるツールとしてご利用いただいているのでしょうか。

そうですね。月に一度出していただいていますが、それは選手に配っています。気になる選手に対してはコメントを付けて渡していますし、最近は選手たち自身にレポートを見てしっかり考えて欲しいなと思っているので、あえてコメントを残さなかったりもしています。
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他の指導者から『Atleta導入後、選手の本音が見やすくなった』といった声をよく伺うのですが、どのような印象をお持ちですか。

やっぱり『Atleta』だとその日の状況がその日のうちに分かる環境になるので、そこが良い点だと思います。ノートなどの練習日誌の運用だとどうしても時間が空いてしまいますからね。選手も『Atleta』だとスマホで記入しやすいですし、私もリアルタイムで把握できるのでとても使いやすいです。
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酒井トレーナーも現役の頃はノートで記録されていましたか。

高校時代は練習日誌を書いていたので、毎日の練習内容や食べたものを書いて記録していました。月に1度くらい監督に提出していましたが、部員数が多かったので基本的に判を押されるだけで、コメントは滅多にありませんでしたね。
でもコメントもらえると私自身とても嬉しかったので、私も『Atleta』で選手にコメントを返すようにしています。
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コメントの書き方・表現から選手の状態を知ることも。
より具体的に、よりポジティブにコメントを書くように指導し、選手が自分で考えられる機会を増やすツールに。

数値やグラフで見ることで課題が明確になり選手たちもスタッフに相談しやすくなっている

駅伝競技チームは入力が定着しやすい傾向があるのですが、競技の特性上『Atleta』と親和性があるのでしょうか。

そうですね。高校時代から日誌を付けている選手が多い印象なので、それがより手軽になって普段やっていることの延長線でできる部分が定着しやすい理由かなと思います。
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手軽に記録ができる他にデジタル化することによる利点はどこにあると思いますか。

データが数値化されるのが大きな利点かと思います。グラフで表示ができて、数日〜数ヶ月単位で俯瞰して見られることはとても良いと思います。選手たちもそれぞれでデータを見て振り返ることができますからね。
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日々の練習の中での走行距離は『Atleta』に記録していますか。

走行距離は記録していないです。練習メニューは監督が基本作成されており、1日20〜30kmくらいになるように設定されています。まだ選手たちは若いので距離を伸ばせていないですが、これから年齢を重ねるごとに距離が伸びていくかと思います。
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高校卒業したばかりの若い選手たちが多いチームとのことですが、データを見て選手たちはどのようなリアクションをしていますか。

例えば一ヶ月間の睡眠の質が悪くて、且つ疲労度が高い選手が『こんな状態だけどどうしたらいいですか?』と質問してきてくれたりすることがあったので、やはり数値やグラフで目にすることで課題が明確になって選手たちも我々スタッフに相談しやすくなっていると思います。相談を受ける中で私自身も分かること分からないことが出てくるので、そこは選手と一緒に学んで正しい知識を共有することを意識しています。
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酒井トレーナーは寮で選手たちと共同生活をされていると伺っているのですが、選手たちと顔を合わせる機会が多い中で、『Atleta』でコメントのやり取りもする意義はどこにあると感じていますか。

私が普段鍼灸師の資格を取るための学校に行っている都合で、午前中にチームに帯同できないことがあるんですね。その帯同できない間のことを把握する上で『Atleta』のやり取りは必要になっています。また、毎日顔を合わせると言っても選手もたくさん在籍している中で一人にたくさん時間を割けるわけでもないので、そんな時に『Atleta』で気軽にコミュニケーションを取れる点が良いと思います。
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「速い選手より強い選手を」

19年の創部から『3年でプリンセス、5年でクイーンズ、10年で日本一』と目標を立て活動され、『21年にクイーンズ駅伝初出場』と前倒しで目標達成されていますが要因は何だったとお考えですか。

一番は何より選手層が厚くなったことだと思います。昨年は強豪からも選手が来てくれたことが大きいですね。
また、選手たちの駅伝への想いが強く、「駅伝に出たい」と言う選手が多かったことも要因だと思います。周りが歴史のあるチームが多い中で、我々は比較的若いチームではありますが、若いからこそたくさん吸収できてチャレンジができるチームなので、昨年のプリンセスとクイーンズ出場は選手たちにとってとても良い経験になったと思いますし、この経験が次に繋がっていくと思います。
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選手層が厚くなったというお話でしたが、これからもチームに有望な新しい選手が加入してくると思います。トレーナー視点で、ズバリどんな選手に来てほしいですか。

そうですねぇ。監督がよくおっしゃっているのは「速い選手より強い選手を」ということなんです。どうしても陸上競技なのでタイムを競う性質上速さを求められるのですが、速いだけでなく強い選手というのは、練習だけでなく普段の生活においても自分の信念を持って色々なことに取り組める選手だと私は思います。
それこそ『Atleta』一つを取っても毎日しっかり記録を続けることが大切だと思うので、それができる選手がチームに必要だと思います。
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地域に根ざした、地域に愛されるチームになりたい

ダイソー駅伝部は世羅町や世羅高校と協定を結ばれており、地域に密着したチームだなという印象を受けています。これらの地域とは具体的にどんな取り組みをされているのでしょうか。

普段から世羅町や世羅高校で練習する機会が多くありますし、選手・スタッフを含めて世羅高校の卒業生は9名在職しています。協定は世羅高校の選手・スタッフへの指導や助言と世羅町のイベントへの協力など、強い繋がりを持ち続けることを目的としています。
地域での交流がコロナ禍でなかなかできない状況が続いてはいますが、地域に根ざした、地域に愛されるチームになりたい思いはあるので、チームの拠点がある東広島市を中心に少しずつ活動できればなと思っています。
昨年は一度しかできませんでしたが、中学生を対象にした記録会をダイソー主催でやらせていただきました。今年度は7回予定しています。また、陸上教室や合宿先での地域交流も積極的にやっていきたいと思っています。
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御社の商品を使った『ダイソー商品トレーニングメソッド』なるものがあるそうですね。

そうなんですよ(笑)昨年くらいからダイソーでトレーニング器具を出しておりまして、腕立て伏せ用のバーやトレーニングチューブなどがありますね。ダイソー商品もかなり使えるものが増えてきているので、それらを使って練習していますね。チューブは強度が数種類あるので、自分の筋力に合わせて使っていいただくと良いと思います。
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そうなんですね!早速お店で探してみます。

是非!
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自己分析を続けることで身体の感覚が研ぎ澄まされてレベルアップできる

高校生や大学生、そして実業団の若い世代からコンディション記録し続けることの大切さについてどのようにお考えでしょうか。

『Atleta』も色んな情報が蓄積できるので、継続して記録した上で日頃から自分で振り返って自己分析をすることはステップアップする上で非常に大切だと思います。最初のうちはただの記録として記入していくだけのものを、実際に自分の競技力向上のためにどうすべきかを考えて、過去のデータから『今度はこうしてみよう』といったところまで自分で繋げられると、次のステップに進めると思います。これを続けていくことで、身体の感覚が研ぎ澄まされてレベルアップできると思います。
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高校から実業団に入ってくる選手の中で、伸びる選手の特徴は何かありますか。

継続して練習できるかどうかは大きいです。一つのとこに対して積み重ねていける選手の方が劇的な成長が見られる傾向になるかなと思います。
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ダイソー 女子駅伝部

<チームの情報>2022年4月現在
選手数:15名
指導者数:6名(監督、コーチ3名、トレーナー1名、マネージャー1名)
Atleta導入時期:2019年8月

<主な成績>
プリンセス駅伝 in 宗像・福津~第7回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会予選会~
総合15位 / 2時間20分51秒

クイーンズ駅伝 in 宮城~第41回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会~
総合21位 / 2時間20分34秒