Atleta通信

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2021.07.19

元オリンピアンから現役選手へメッセージ。”報われない努力はあるが、無駄な努力はない”

【活用事例】#19 柔道 天理大学

目次

現役時代は数々のタイトルを獲得しオリンピック出場経験もある穴井隆将(あないたかまさ)監督率いる名門、天理大学柔道部もAtletaをご利用いただいています。

競技者として天下を取った穴井監督がなぜAtletaを選び、指導者としてどのような思考を持っているのか。また元オリンピアンとして伝えたい、現役スポーツ選手たちへのメッセージ。余すところなくお話していただきました。スポーツに関わる全ての方に必読いただきたい内容です。

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自主性を尊重してプライドを持って指導する

指導する上で大切にしていることを教えて下さい。

選手の自主性を尊重することです。指導者としてアドバイスや環境作りは大事ですが、結局それを活かすかどうかは本人次第です。何らかのきっかけを与えて、それを掴んでステップアップできる選手の育成を目指しています。また大学は社会への出口でもあるので、自信を持って社会に出られる人間になって欲しい思いで指導をしています。
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この指導への意識は穴井監督ご自身の経験によるものなのでしょうか。

例えば、私は学生時代に篠原信一さんからご指導いただいていました。あの方は実は管理徹底型で、細かく練習内容を管理して選手たちに課題を与えるタイプでした。その中で私は自分で課題を見つけて解決したいと思うようになりました。そういった意味では自ら考えられる人間に育てていただいた経験が影響していると思います。
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選手自身が課題に気づき、解決に向けて取り組めるよう指導するのはとても難しいですよね。

難しいからこそやらなきゃダメです。人間は必ず能力を持っていて、その能力を引き出してあげるのが指導者の仕事です。例えば子どもに箸の持ち方を教える時だって、親がいろんな方法で教えますが、最終的には『頑張って箸を使おう』という子どもの意思によって箸が使えるようになりますよね。誰だって『箸を使う』という課題はクリアしてきているんですよ。
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確かにお箸が使えない人は殆どいませんからね。

それなのに大人になると「お前はどうしてできないの?」「なんで分からないの?」と言って突き放してしまう。その時点でお終いです。それよりも、「なぜできないのか」「何がネックになっているのか」を見つけて解決してあげることが重要ですし、そうしてあげると案外あっさりクリアできるものなのですよ。
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選手自身で解決できるためのヒントを提示してあげることが大切なのですね。

もう一点気をつけないといけないのが、選手が育つ速度には差があるということです。1を言って10悟れる人もいれば、5言わないと悟れない人もいますし、9言わないと伝わらない人だっています。でも、それは後者が悪いのかというとそうではなくて、そこは指導者のプライドにかけて手がかかっても指導して分からせる事が重要だと思います。どれだけ時間がかかっても、しっかり10身につけた上で、天理大学柔道部員としての自信とプライドを持って社会へ巣立って欲しいです。
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蓄積データを選手に提示することで指導の信憑性が増す

Atleta導入のきっかけを教えて下さい。

コーチが今みたいにいなかった時期は、選手のデータ管理がとても大変でした。そんな折にCLIMB Factoryの営業さんがいらっしゃいました。正直、最初はあまり当てにしていなかったのですが、話を聞いていくと「今自分がやっていることをもっと便利にしようとしてくれているな」という印象を受けました。
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タイムリーにご提案できてよかったです。

データは単に蓄積すれば良いわけではなくて、それを活用することが大事です。指導する上でデータの活用は重要で、蓄積データを選手に提示することで、指導の信憑性が増すんですね。そのために導入前は100名近くの選手のデータをEXCELで手入力していました。
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穴井監督お一人でされていたんですか。

はい。これとってもエネルギーがいるんですよ。もちろん選手のための時間と労力は惜しみませんが、惜しまないにしても効率よくやりたい。そんな悩みを抱えていた私に『Atleta』という天使が舞い降りました(笑)本当にありがたかったです。
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そこまで言っていただけてこちらこそありがたいです!

振り返り、アウトプットとして活用。自主性に任せた運用

穴井監督ご自身が現役の時からこういったデータ管理は重視されていたのですか。

ここまでのデータ管理はやっていませんでしたが、ノートを付けていました。その日の練習内容、体調、モチベーション、課題といった内容を記録していました。今でもそのノートは残っていますよ。
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ノートへの記録はご自身でやると決めたのですか。

そうですね。記録を残すことは大事なことだと現役当時から考えていました。ただ、例えば体重やウエイトトレーニングの記録なんかもしていましたが、それをグラフにして推移を見るといったところまではしていませんでした。当時は手書きでしたからね。
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ノートの記録を振り返ることはありましたか。

振り返りもほとんどしませんでした。あくまでアウトプットが目的だったので。記録する行為自体がその日を振り返ることになっていたのかもしれません。
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今の選手には「コメント機能」等を使って振り返りするように指導していますか。

部員の中にはしっかり記録している選手もいますが、私から強制はしていません。こういったものはやらされてやるものではないと思っています。なので、コメント欄も私はあまり見ていませんし、何かあれば直接言いなさいと伝えています。基本寮生活で24時間一緒にいますからね。
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義務付けることが新たな自主性を生む

3年程ご利用いただいていますが、活用しきれていない時期もありましたね。導入してから利用方法や目的など変わったことはありましたか。

選手たちにデータをフィードバックする目的そのものは変わっていないです。変化があったのはフィードバックの中身ですね。先程の話に戻ってしまうのですが、私自身が書き残すだけで済んでいたタイプの人間だったので、同様に指導する選手にも記録させるだけで終わっていました。蓄積されたデータも単に渡して、「あとは自分で見てね」といった状態でした。ただ、それだけだと選手たちは何を見ればよいか分からなかったんだと思います。そこで、私が蓄積データを選手たちに見やすく、納得してもらえるようにすることで、Atletaの可能性が広がりました。
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コロナ禍に伴い入力率が上がった印象もありますね。入力することで選手に変化はありましたか。

今まで選手のAtletaアクセス頻度は高くありませんでした。選手自身が入力する前に自己完結してしまっていた部分があったからだと思います。それがコロナ禍の取り組みとして、体温と症状の入力を義務化したことで、「じゃあ体温以外の項目も記録しよう」と選手たちの意識が変わり、他の項目の入力率も上がりました。義務付けることが新たな自主性を生むんだなと、私自身にとって大きな気づきにもなりました。
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最初はコメント欄に簡単な行動歴しか入力していなかった選手が、日に日にしっかり振り返りまで入力するようになっていますね。

私は柔道に対して本気になれる空気を作っています。大学生ってどうしても現実を見て、あまり夢を語らなくなってしまうんですよ。本気になることがかっこ悪いみたいな。でも本気になっている人はかっこいいし、本気になっている人をバカにするようなことは最低の極みだと。だからこそ本気になれと伝えていますし、そこは選手に伝わっていると思います。そこから自主性が生まれて、コメントが入るようになったのかなと思います。
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我々は大学として学生を手ぶらで卒業させるわけにはいかない

Atleta以外で行っている独自の取り組みなどあれば教えてください。

大学卒業後に繋がるキャリア教育に力を入れています。言わばAtletaは現役選手としての強化の一環として利用させていただいていますが、その先まで見据えた教育まで力を入れています。我々は大学として学生を手ぶらで卒業させるわけにはいかないんです。そのために、色んな職種に対応できる対策教育を部内で行っています。
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希望職種ごとに部内でキャリア教育されているんですね。

例えば、警察官になりたい学生には、たまたま私の父が警察官なので父に協力してもらって対策講座を行ったり、教員であれば教員をやっているOBに来てもらって対策講座や面接指導を開いてもらったり、一般企業の対策としてはSPIの教育とかですね。
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学生としても非常に為になりますね。

それとは別に、アスリート学生を支援する会社に支援をいただきながら、学生が先を見据えて何がしたいかという『逆算の思考』を身につける教育もしています。柔道だけでなく、生きていく上で何らかの目的や目標を持ち、それを達成するために1ヶ月後どうならないといけないか、1週間後はどうか、そのために今日何をしないといけないかという逆算の思考が大切なんですね。この思考を学生時代から身につけるためにこの教育に力を入れています。
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これは社会に出ても必要な思考ですからね。

部活動においても、自分の目標を定めてそれをクリアするためにどうしないといけないかを考える、これも逆算の思考ですよね。だからAtletaを使うんです。先の目標達成のために今何を記録しておかないといけないか、自分を知るということにおいて、Atletaというツールは非常によくできていると思います。
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今後の目標を教えて下さい。

これが最大の目標です。平成5年からもう30年近く優勝から遠ざかっていて、私が学生時代もあと一歩で届かなかったし、去年だって3位だったんですが、ここまで来ると3位も2位も1位もほとんど差はないんですよ。あとは運もありますし、これまでの取り組みがハマるかどうかの僅かな差だと思います。それでも耐えて、諦めずに愚直にコツコツ練習し続けるしかないと思います。その中でAtletaを使わせてもらって選手の意識改革であるとか、取り組みの改革に寄与してくださいっていることは本当にありがたいです。選手たちも自主性が出てきたので、これを引き続き伸ばせるような環境作りを我々指導者はやりたいし、Atletaでも引き続きご支援いただけたらありがたいです。
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元オリンピアンから現役選手へメッセージ

最後に、全国のAtletaユーザーに”元オリンピアン穴井隆将さん”としてお言葉をいただけると幸いです。

私はオリンピック出場こそしましたが2回戦で負けています。

それまでは「努力は人を裏切らない」と本気で信じていましたが、負けた時「努力なんかしても無駄だな」って思いました。オリンピックに向けて必死にやってきたつもりでしたし、怠けていたつもりもありませんでしたがそれでも負けたので、自暴自棄になってしまいました。

その後に引退表明したのですが、引退表明後に出場した2013年の全日本柔道選手権で優勝したんですよ。2012年の8月にオリンピックで負けてから2013年の4月の全日本優勝までのおよそ8ヶ月間、ほとんど練習なんてしてなかったのに優勝したんです。

その時に、「世の中に報われない努力はあるけど、無駄な努力はない」と思いました。5歳から柔道始めて継続してきたことは、8ヶ月程度では崩れなかった。ということは、やっぱり努力は必要なんですよ。

世の中色んなスポーツがある中、頑張っている選手たちはみんなプロ、代表になりたいし、金メダルを取りたいです。スポーツを真剣にやっている以上そこを目指さない選手はいないと思います。みんなトップになりたいですけど、みんながトップになれるわけないじゃないですか。それが世の中です。

だからこそ、報われないことを前提にして努力をしないといけないし、報われないかもだけど、無駄な努力がないということを信念に、結果に一喜一憂せず頑張り続けて欲しいと思います。

素敵なお言葉ありがとうございました!トップアスリートを目指す選手たちの心に響いていると嬉しいです。

プロフィール

天理大学 柔道部監督 / 穴井隆将氏

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天理大学(てんりだいがく)柔道部

<チームの情報>2021年2月
選手数:97名(主務含む)
指導者数:2名(外部コーチ含む)
Atleta導入時期:2017年11月

<主な成績>
2019年 全日本学生柔道体重別団体優勝大会 第3位
2019年 全日本学生柔道体重別選手権大会 個人60kg級 優勝

<保有ライセンス>
全日本柔道連盟公認指導者資格Bライセンス