キーワード:

2022.09.14

「駅伝2冠」を4年連続獲得。全日本大学女子駅伝で史上初の6連覇が期待される名城大学女子駅伝部の選手育成を伺いました

【活用事例】#40 駅伝 名城大学 米田勝朗氏・中尾真理子氏

目次

全日本大学女子駅伝と富士山女子駅伝(全日本大学女子選抜駅伝)の「駅伝2冠」を4年連続で獲得している名城大学女子駅伝部にインタビューしてまいりました。米田勝朗 監督、中尾真理子 コーチからは、常勝軍団のイメージとは異なる意外な選手指導のお話をお伺いできました。学生生活を「駅伝無敗」で終えた最上級生が3月に卒業、4月には高校での高い実績を持った新入生7名が加わり、今年度も2大駅伝での圧巻の走りが期待されます。全日本大学女子駅伝では史上初の6連覇が期待されている名城大学女子駅伝部のインタビューをぜひご覧ください。

徹底した体重管理はしない!?選手の自主性を重んじた指導方法とは

『Atleta』を知ったきっかけを教えて下さい。

大学時代の同級生に紹介してもらったのがきっかけです。以前から、選手がどのような取り組みをして、いまどのような状況になっているのかを把握できたらと思っていました。もともと紙で体調チェックをしていたのですが、メディカル面で弘前大学の先生や食事面で名古屋学芸大学の学生にサポートしてもらっており、遠隔から選手の情報をリアルタイムに共有できる面ですごく使いやすいのではないかと思いました。
avatar

遠隔サポートができるのはデジタルの強みですね。

また、欲しい情報が簡単に見られる点や、グラフも表示できるので、一ヶ月前の状態と比較しやすい点も良いですね。データをもとに話もできますし、記録を残すことが継続しやすいのもデジタルの良さだと思います。
avatar

2018年全日本大学女子駅伝での優勝要因として、「選手の自主性を重んじた指導に変えた」とお伺いしましたが、具体的に体重管理などはどのようにされていますか?

体重に関しては、年に数回のメディカルチェックでの確認と自己申告のみです。自己申告は、日々『Atleta』に入力してもらっていますが、「多いんじゃない?」など、私から何か選手へ伝えることはないですね。コーチ陣はチェックしていますが、逆に私はチェックすること自体減ってきていますね。
avatar

監督が、事細かに体重をチェックされていないことには驚きました!

以前は、強制的な管理をして厳しく指導していました。ですが管理することで、監督に見せるために測るもの、というイメージでしたし、何のための体重管理なのか、目的を見失っていました。長距離という競技にとって体重はパフォーマンスとの相関性が高く大切ですが、ただ体重を落とせばいい・増えていなければそれでいい。という考えが染み付いてしまっていましたね。
このやり方だと実業団に上がった際、自分で管理ができなくなってしまうのではないかと思ったんです。

日本の代表として日の丸をつけて走ることを考えたら、自己管理ができる選手にならなければいけません。卒業後の自己管理も考えた結果、自主性を重んじる指導に変えていきました。
avatar

「自主性」と「自由」の間の線引きが難しいように感じます…

2005年の初優勝後、次の優勝まで成績がガタッと落ちましたが、そこはまさに自主性と自由を混同してしまった時期でしたね。監督が細かいことを言わないから、ついそれに甘えて「これくらいいいや」が積み重なり、食生活を意識できなくなったり、長距離ランナーとしての基本的なことが疎かになってしまっていましたね。
avatar

そのような時代も乗り越え、今の強さに繋がるんですね。

立て直しに時間はかかりましたが、今ではしっかり一人一人が自分で考えていろいろな取り組みをしていて、レース最中でも自分で判断ができるので崩れないです。良いメンバーが揃っていても走ってほしいメンバーが走れないと戦力は落ちてしまいますが、この5年間1人もケガ人が出ていません。
avatar
自主性を大事にしていくと、活かせる選手と持て余してしまう選手がいて、チームにばらつきが生まれます。逆に管理した方がばらつきは少ないです。でも、そうすると「走っている」感覚よりも「走らされている」感覚に陥り、競技をやっていても面白さ・充実さが減ってしまうんですよね。
avatar

ちなみに入力を忘れてしまうことはありますか?

もちろん入力を忘れる子はいますよ。一方で日々のルーティンがきちんと決まっているような子は欠かさず入力していますね。入力に関しては、選手の性格にも影響を受けますよね。
ですが、長距離ランナーはそういうことができないと結果を出せません。積み重ねが大事な競技ですからね。入力に関しては、コーチから声かけや指導をしてもらっています。
avatar

『Atleta』を使う目的は、選手自身、自分が調子いい時や悪い時、こういう時にはこういう形で体調を戻していったんだなと振り返れるようにするためのもの

昨年は2冠達成、また全日本大学女子駅伝5連覇中と、素晴らしい結果を残されていますが、選手育成において大切にしていることを教えてください。

年々少しずつ目標設定を上げてきています。ただ勝てばいい、大学長距離界で一位を取れれば良いのではなく、一位の中身を去年の記録よりも高いものにしていく、レベルの高い勝ち方をしようと、常々話しています。
去年よりも、もっともっとと常にハードルを上げてきていますが、選手たちもそこについてきてくれています。今では良い循環が生まれてきていると感じます。
avatar
あとは先述した通り、あまり私が入りすぎない・細かく言い過ぎないのも大事かなと思っています。言いすぎると、『Atleta』に書けなくなることもあると思っていて。『Atleta』を使う目的は、選手自身、自分が調子のいい時、悪い時を振り返られるように、こういう時にはこういう形で体調を戻していったんだなと振り返れるようにするためのものなので、嘘の事実を入力しても意味がないです。そういう意味ではこちらがチェックをしすぎると、素直に入力できないこともあるかなと思って、あまり余計なことを言わないようにしています。
走れなかった時こういう体重ではダメなんだ、こういう食事ではスタミナが切れてしまうのか、睡眠時間が足りてなかったのか、そんなことを自分自身で振り返ってほしいと指導しています。
avatar

最後に、今後のチームの目指す姿を教えてください。

大学女子駅伝での勝利を考えた際、他大学に合わせて考えると、歯車が合わなくなったり負ける可能性があります。でも今名城では、大学ではなく実業団・プロに目線を合わせて考えています。
例えば、2021年の5,000mの6人の平均タイムを実業団チームと比較した際に(外国人選手を除き)、名城はいま4位まできています。
立命館大学さんと名城の大学女子駅伝5連覇が最多ですが、新たな歴史にチャレンジできることはありがたいことですし、そこに挑戦していきたいと思っています。
いつかは負けるんでしょうけど、自分達が崩れて負ける形にはなりたくないなと。自分達の上をいくチームが出てきて負けるのならしょうがない、そこを管理していくのは監督・コーチの仕事かなと思っています。
avatar

現場での実際の『Atleta』活用方法について中尾真理子コーチにお話し伺いました

普段どのように『Atleta』を活用していますか。

体重と月経の内容は目を通して自分のノートにメモしています。増減や変化を一覧で見たいので、自作のメモに記載している感じですね。「生理あり」の選手が、実際に体調を悪そうにしていた際気にして声をかけることもあります。
他は、身体の痛み、精神的な疲労度、睡眠の質を見ますね。精神的な疲労は個人的に結構重視します。前日が「疲れている」なのに、翌日「かなり疲れている」だと気になり直接聞くこともあります。
avatar

月経管理はどうしていますか?

入部時に選手へ月経についてアンケートをとっています。初経のタイミング・月経周期・生理痛の重さ・いつから止まっているかなど、指導するうえで把握しておきたいことを聞いています。あとは、治療を望むかどうか・不安なことなどを聞き、これを基に選手とお話しし、本人が希望する場合は、保護者も納得する形で治療を促したり病院に連れて行ってます。選手がなるべく不安になりすぎないように話をするようにはしています。
avatar

理解してもらいやすい環境は安心ですね。

名城では、食事やサプリメントの対策等もあり、卒業する頃にはきちんと月経が来る選手が多いです。これまでの同じように月経不順だった先輩も、卒業時には改善している話をすると今の選手も安心材料にできるのかなと思っています。
avatar

日誌を廃止するのは、正直不安はありませんでしたか?

もちろんありました。監督とも相談しましたし、本当にやめていいのかな?と思いましたが、選手が見られるから書かなきゃというより、自分が振り返るためだけに書く方がいいのかなと思って、思い切って直接コミュニケーションをとる形にシフトしました。
結果的に、必要なことは選手からも発信してくれているので、お互いストレスフリーでコミュニケーションを取れている印象があります。マネージャーもなるべく積極的に選手と会話してくれたりしていて、選手から聞けないことをマネージャーから聞くこともできています。
avatar

入力がされていない場合どんな伝え方をしますか?

チームとして取り入れていることなので入力するように話します。例えば、大学生の間は「入忘れちゃいました」で済みますが、実業団にいったら「それが仕事になる、忘れましたは通用しないからね」という話をしたこともありました。
avatar
あと、トレーナーとして来てくれている外部の先生や、食事を作りに来てくれているゼミ生も『Atleta』を見れるようにしているので、名城駅伝スタッフだけではなく、いつもお世話してくれている色んな人が見ているんだよということも話します。
avatar

チームの専属スタッフだけでなく、周囲の方々も巻き込んでご利用頂けているようで大変嬉しいです。本日は米田監督、中尾コーチ貴重なお話をありがとうございました。

名城大学(めいじょうだいがく)女子駅伝部
米田勝朗監督・中尾真理子コーチ

<チームの情報>2022年9月現在

部員数:部員20名
指導者数:4名(監督、コーチ2名、部長1名)

Atleta導入時期:2018年2月(CLIMB DB導入時期:2017年5月)

<チームの主な成績>
2021年度
・2021全日本大学女子選抜駅伝競走 富士山女子駅伝 優勝(4連覇中)
・全日本大学女子駅伝 2022 杜の都駅伝 優勝(5連覇中)
・第90回日本学生陸上競技対抗選手権 1500m・5000m 2位入賞
・日本学生陸上競技個人選手権大会2021 5000m優勝
2020年度
・2020全日本大学女子選抜駅伝競走 富士山女子駅伝 優勝
・全日本大学女子駅伝 2021 杜の都駅伝 優勝
・第89回日本学生陸上競技対抗選手権 1500m・5000m・10000m 優勝、2位入賞