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2024.07.05

トップスイマー育成の秘訣。『Atleta』で見つける選手の本音と成長のカギ

【活用事例】#50 水泳 ダンロップスポーツクラブ藤沢 薩摩 将広氏

目次

『Atleta』をご利用いただいているのは部活動だけではありません。今回ご紹介するのは水泳の名門ダンロップスポーツクラブ藤沢でコーチをされている薩摩将広さん。なんと『Atleta』歴は6年目と長年に渡って使いこなし多くのトップスイマーたちを輩出されてきました。
今回はそんな薩摩さんの長年の経験から導き出した指導論から『Atleta』の活用術までたっぷりお話を伺いました。

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ノートにはないレスポンスの良さや手軽さを感じた

Atleta導入当時、クラブの運用で困っていたことなどはありましたか?

水泳業界では練習ノートを書かせるのが一般的で、その日の練習内容や反省点を書いて1日終わるのが基本です。うちでも当然それを小さい頃からやせているのですが、コーチがそれに対してアドバイスやフィードバックするためにノートを預かると、次の日選手たちはノート書けなくなるんですね。練習は毎日あるのに活用が上手くできない点に課題を感じていました。
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そんな中で『Atleta』を見つけていただけたのですね。

『Atleta』はノートにないレスポンスの良さや手軽さを感じたので導入を決めました。選手たちが記録するのもスマホであれば学校へ行く途中の電車の中や隙間時間にできるので、そういう点に魅力を感じて問い合わせた気がします。
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6年間の中で『Atleta』も数々のアップデートを重ねて来たのですが、その中で便利になったと感じたものがあれば教えてください。

最近ですが、コメントやコンディションに対してリアクションをつけられるようになったのは非常に助かっています。
選手たちもコーチが自分の登録した内容を見ているかどうかは続けるモチベーションに繋がりますから。こちらから何らかのリアクションをしてあげられるのは良いですね。
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🔄改善しました!

コメントやコンディションにリアクションを付けることが出来るようになりました。

”自分で気づくこと”がとても重要

『Atleta』の入力を続けられている選手が多い印象があるのですが、そこは意識的にコーチ側から働きかけをされているのでしょうか。

教育というか啓蒙というか、「『Atleta』への記録までがトレーニングですよ」っていうのは常々言っています。だから最初のうちは慣れるまで、練習後に『Atleta』の記録を終わらせないと帰らせない形を作っています。
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振り返りは具体的にどんな指導をされているのですか?

特に練習で気づいたことやコーチに言われたことはしっかり『Atleta』へメモするよう指導しています。言われてすぐは分かっているけど時間が経てば忘れてしまって、結局次の日も同じ失敗をしちゃうことがあるんですよね。
気づいたことは箇条書きでいいからとにかく『Atleta』に記録させて課題に気づかせる。”自分で気づく”ってとても重要だと思います。
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選手自身で気づいて欲しいからこそ指導者側からはあまり直接的なアドバイスはしないのでしょうか。

例えばネガティブなコメント「もうダメだ」とか、そういったものがあればもちろんフォローするんですけど、それ以外は基本的にはスルーしています。また、込み入ったテクニック的な課題を記録していた選手には翌日の練習の時に「『Atleta』に書いていたけど、ここはこうするんだよ」という感じで直接指導しています。
技術面は書ききれないし、直接指導したほうが伝わりますからね。
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内容はあまり気にしていなくて、とにかく続けさせること

中学年代も使ってくれていますが、中学生には少しハードルが高い印象があると聞くこともあります。

内容はあまり気にしていなくて、とにかく続けさせること。これがもう最優先だと思うんですね。
小学生には練習ノートをやらせているのですが、小学1年生のノートなんてはっきり言って読めないような形なんですよ。でも、毎日やらせていると、ちょっとずつ精度が上がってくるんです。
内容はそこまで求めずに、まずは続ける習慣をつけさせることが大切だと思っています。中学生はそれがノートからスマホに変わるだけなので、中身よりもとにかく続けさせることを意識的に指導しています。
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コンディションを記録する上で、選手自身で気づいて欲しいポイントがあれば教えて下さい。

特に気にして欲しいのは睡眠時間ですね。
睡眠時間が少ない日は上手くいかないことが多いと思うので、できなかった原因として睡眠時間の短さがあることを分かって欲しいです。
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睡眠時間は具体的な推奨時間など設定されているのでしょうか。

練習時間もみっちりあるのでなかなか厳しいですが、その中でも最低5時間は睡眠時間を取りなさいと伝えていて、4時間割るようだと練習はさせません。
このくらいの時間だと脳震盪と同じような感覚になるというデータもあり、身体にダメージを与えてしまうことになるのでこのようなルールを設定しています。
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自分が頑張った分そのまま結果に繋がる水泳にすごく面白さを感じた

ちなみに薩摩さんもずっと水泳をされてきたのでしょうか。

いや、実は全く畑違いで、高校まではサッカーをやっていました。たまたま大学の近くにスイミングスクールがあって、そこのアルバイトで入ったのが始まりで、そこでどっぷり水泳にはまってしまった感じです。
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そうだったんですね。てっきり学生時代バリバリ泳がれていたのかと思っていました。

それどころか全く泳げなかったに近いです。
元々大学で教員の免許取っていたのもあって子どもに教えることについては興味があったので、教えるに当たっていろいろ勉強しましたよ。
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それまでサッカーをされていたとのことでしたが、アルバイトを機に水泳にはまったのは何故だったのでしょう。

一番感じたのは水泳が個人競技だったからだと思います。サッカーとかの団体競技だと自分が調子良くても誰かのミスで負けたり、逆に自分のミスで負けたりすることがあるじゃないですか。僕の性格的にそんな団体競技をあまり楽しめなくて。
一方で自分が頑張った分そのまま結果に繋がる水泳にすごく面白さを感じました。
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『全力を尽くす』『絶対に強くなる』という2軸を大切に

選手を指導する上で心がけていることや大切にしていることはありますか。

やっぱり水泳って反復しないと上達しないんですよ。ですが反復練習ってマンネリ化しやすかったり、詰まっちゃったりすることがよくあって、そこをどうモチベーション高く維持させられるのかっていうところは意識していますね。
そのためには選手自身の自覚というのが重要なので、自覚を持って取り組めるような指導を心がけています。
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水泳未経験ながらこうしてトップレベルの選手を輩出し続けるためのメソッドというか、強さの秘訣みたいなものがあるのでしょうか。

難しい質問ですがやっぱりその強さを求め続けて全力を尽くすことです。意識できれば自然ときつい練習にも耐えられるようになります。
僕も含めて常にチーム全体が上を目指す気持ちを切らさないように、モチベーションを持ってくるためのツールとして『Atleta』を使わせてもらっている部分はあります。
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高いモチベーションを維持させられている点については薩摩さんの声掛けや発信するメッセージが的確だからかと思うのですが...!

僕からはあまり声はかけないですけどね(笑) そもそも自主的に毎日朝からきつい練習を頑張れる選手たちが集まってくれていますから、それだけでも素晴らしいことだと僕は捉えていて。
選手が全力を尽くすのを前提で指導者として話をして、対応することを心がけています。
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強い意志を持った選手たちが集まっているのですね。

あと『絶対強くなる』という軸をしっかり持ってもらうようにしています。それをやった方が速くなるのかならないのか、僕もコーチとして様々な質問やアドバイスを求められますが、そこを軸に答えを出しています。
基本の共通の認識として『強くなる』、そして『全力を尽くす』2つの軸を大切にしています。
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トップを目指す。”水泳と関わる覚悟”の確認

ここの意識レベルはダンロップスポーツのようなクラブチームと学校の部活動とでは少し違うのかなとお話を聞いていて思ったのですが、いかがでしょうか。

そうだと思います。
選手が小学校から中高生に上がる時には必ず保護者と選手とで面談をさせていただいて、これからの水泳との関わり方について話をさせてもらいます。
これからは楽しむ水泳をしたいのか、そこそこ頑張る水泳をしたいのか、必死で頑張って上を目指す水泳をしたいのか。
どれが正しくて、正しくないとかはないんです。
ただうちは限られた環境しか用意できないので、必死で頑張れる子でなければ卒業してもらって、他のスポーツに行くか他のスイミングに移籍して楽しく続けてもらうか道を選択してもらっています。
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進学のタイミングで選手たちの水泳への意志を確認するのですね。

覚悟の確認ですよね。水泳でトップ目指している子であれば、仮にその時点で結果が出ていなくても頑張ってくれればいいよって形で残ってもらっています。
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自分の進む道をちゃんと意思決定してもらって、覚悟を持って取り組む点は、確かに一般的な部活動よりも強い意志が必要になりますね。

部活動だと嫌でも入らなきゃいけなかったりしますからね。その点うちのようなクラブに入るからには、しっかり頑張る意志を見せてもらったうえで入ってもらっています。
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クラブには女子選手も多く所属されていますが、ルナルナ連携機能の利用率が非常に高いですね。

僕の方で男子と女子向けに分けてパンフレットを作っておりまして、女子向けのパンフレットの中でルナルナ連携まではやって欲しいと伝えています。
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月経管理の面では何か薩摩さんから指導をされたりしているのでしょうか。

いや、ここはもう自己管理しなさいってことだけでこちらから確認はしていません。水泳において女子のコンディション管理はすごく重要ですからね。中学生から初潮が来る子も多いですし、その辺り保護者とも連携して上手く使っていけたらなと思っているところです。
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『Atleta』を長期に渡りご利用いただく中で感じた良い変化などがあれば教えて下さい。

練習前にコンディションを入力させてますが、そこでイレギュラーな記録があった時はアラートで知らせてくれるよう設定しています。
まずはそれを確認して、異常があれば声をかけるような形が取れているので、コミュニケーションは非常にやりやすくなりましたね。
『Atleta』のようなツールがないと選手から言い出しにくいこともあるでしょうから、こちらから先に気づけるのは大きいです。
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ホーム画面のダッシュボードを見てくれていますね!

はい。あれはすごく良いですね。それまでは毎回全員のコンディションを開かないと誰が調子悪いか分かりませんでしたから。
ダッシュボードだとイレギュラーがある子をひと目で分かるようになったので便利です。
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”できないことに少しずつ挑戦させてできるようにする”のがコーチの腕の見せ所

選手の体調面以外で『Atleta』を通して知ることが出来た気づきはありますか。

コーチ側で感じる練習の手応えと、選手自身の感じる練習の手応えのズレは未だにありますね。コーチ側の方が楽観的というか、選手たちの方が自分事だからよりシビアでネガティブに捉えていることが多くて。なのでそういった記録を見ると早めに「いやそこまで考え込まなくて大丈夫だよ」って伝えるようにしています。
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真面目過ぎるからこそ思い込んでしまう選手がいるということでしょうか。

「まだ今の時期はそこまで求めてないよ。できなくて当たり前なんだよ。」と言っても、選手にとってはできないとつまらないし焦っちゃう、挙げ句投げ出したくなっちゃいますから。
その辺の気持ちのちょっとしたズレを『Atleta』で早期発見して軌道修正してあげるようにしています。
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「できなくて当たり前なんだよ。」ってコーチから言ってもらえると選手も救われますね。

できないことにちょっとずつ挑戦させてできるようにするのがコーチの腕の見せ所ですからね。
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「理想の選手にしたいけど中々選手がついてこない」といった悩みを抱えている指導者のお話を伺う機会もあるのですが、そこは少し選手に求めすぎている部分があるのかもしれないなと感じました。

僕もそうだと思いますね。指導者側が欲張り過ぎたり焦り過ぎたりしてはいけません。
ちょっとずつで良いので課題を作って、それらを少しずつクリアできる選手が強くなると思います。
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次こそは必ずオリンピックへ

連絡ボード機能もご活用いただいていて、ほぼ毎日記録をまとめた資料を展開されていますね。

はい。あれは練習中に測定した記録を練習後に僕が電卓叩いて表にまとめて毎日上げています。
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あの表毎日手作りされているんですか。てっきり専用のソフトとか機器があって、そこから出力されているのかと思っていました。

いえ、作るのに毎日3,40分かかっています。選手たちも毎日頑張っていますし、日々の記録をああいった形で見られる方が効果的ですから、やってあげなきゃいけない部分だと思っています。
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最後にダンロップスポーツクラブとしての今後の目標があれば教えて下さい。

ジュニアの段階でのオリンピック選手輩出というのは念願の目標になっています。過去に3回チャンスはあったのですが届かなかったので、4年後のロサンゼルスオリンピックに向けては何とか達成したいと思います。
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私たちも心から応援しています。本日はありがとうございました。

ダンロップスポーツクラブ藤沢

薩摩 将広(さつま まさひろ)
<プロフィール>
日本水泳連盟コーチ4

<チームの情報>2024年6月現在
選手数:80名(年齢別で4クラス、小学校1年生~高校3年生まで)中高生クラスで14
コーチ:4
Atleta導入時期:2018年2 

<チームの主な成績>
国際大会代表選手選考会 優勝
全国JOCジュニアオリンピックカップ 団体(クラブ)対抗 3位
ジュニアパンパシフィック大会 出場

その他、多数大会で活躍選手を輩出