Atleta通信

2021.11.18

指導者に知ってほしい!スポーツメンタルトレーニングとスポーツ心理学【入門編】

アスリートのためのスポーツ情報ースポーツ医科学で強くなるー

目次

”トップアスリートの知見を多くの方に伝えたい”という思いから、
スポーツ医科学サポートの専門家集団である京都トレーニングセンター(※詳細は下記)に協力いただき、「スポーツ」に関して様々な角度からコラムを定期的に配信いたします。

京都トレーニングセンターの相川と申します。第五回は「スポーツメンタルトレーニングってどういうことをするの?」「スポーツ心理学ってどういった学問なの?」といった概論をご紹介します。
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「心理的・技術的・体力的」3つの要素でどれが一番重要?

研究会に登壇された先生から「実際の競技場面を考えたときに、心理的・技術的・体力的の3つの要素の中でどれが一番大切ですか?最も重要と思うもの1つを挙げてください」という質問がありました。
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多くの参加者が

と答えました。

しかし「それでは、普段一番多く行っている練習はどの要素ですか?」という質問では、一転して

という回答になりました。

心理的要素を重要と感じつつも、トレーニングについてはあまり行われていないようです。

これはあくまでも筆者が体験した一例です。すべての選手・チームに当てはまるわけではありませんが、特に中学・高校生年代はスポーツ活動をする時間も限られてしまい、どうしても心理的要素の向上に時間が割けられないことも多いようです。

スポーツは心・技・体

日本では、昔から武道の世界において「心・技・体」の重要性が謳われてきました。

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現在のスポーツにおいても「心・技・体」のすべてがそろうことで、高いパフォーマンスが発揮できると多くの指導者やアスリートは感じていると思います。

心の状態が良いときには、体の調子もよく技も冴えます。しかし心の状態が悪いときには、体や技にも悪影響が出る。

同じように技や体も心に影響し、技と体もお互いに影響を及ぼし合います。そういった問題に対して、予防や対処をするために心理的なトレーニングが必要になります。

スポーツ心理学とは

まずスポーツメンタルトレーニングを説明する前に、少しスポーツ心理学について知っていただきたいです。

スポーツ心理学は、

「スポーツに関わる事象や問題を心理学の立場から研究する学問」(加賀,1988)

と定義されています。

スポーツ心理学を詳しく見てみると、自らの競技力向上や競技場面で必要なスキルの研究ばかりではありません。ではスポーツ心理学ではどんな疑問から研究がおこなわれているのでしょうか。

などスポーツや運動をこころの面や、からだとこころの関連性といった面から研究がされています。

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大きく分類すると運動心理学、さらにスポーツ心理学や体育心理学、健康運動心理学など細かく分かれます。1つ1つの分野の説明はまたの機会にいたします。

その中の1つにスポーツメンタルトレーニングの領域が存在します。

スポーツメンタルトレーニングとは

アスリートはより高いパフォーマンスを発揮するため、日々とてもハードな練習を実施します。先ほどの「心・技・体」のように心理的な側面もトレーニングを行っていく必要があります。
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スポーツメンタルトレーニングとは、

「アスリートをはじめとするスポーツ活動に携わる者が、競技力向上並びに実力発揮のために必要な心理的スキルを習得することを目的とした、スポーツ心理学に基づく体系的で教育的な活動である。また、競技力向上・実力発揮に加えて、心身の健康や人間的成長も視野に入れた活動である。」

と定義されています。

定義中の「心理的スキル」とは、

の両面が含まれています。

「スポーツメンタルトレーニングとは?」をまとめると以下の3つようになります。

 

①試合・大会でのピークパフォーマンス発揮のためのトレーニング

スポーツメンタルトレーニングはこころを整えるためのいろいろなスキル(リラクセーション技法など)を効率的に学んでいきます。

技術や体力のトレーニングと同じように、心理スキルを知ることで効率的にこころを強化していきます。

 

②日頃のトレーニングの質の向上

試合でのピークパフォーマンス発揮には普段からのスキル練習が必要です。選手自身が必要なときに、適切に実践できるように日常的な練習の中でスキル発揮の習慣化が必要になってきます。

また目標設定技法などを通して、主体性をもって行う質の高い練習など、意識の変化を行います。

 

③人間的成長とチームワーク向上

選手自身にこころを観察させて自分で調整したり、感覚を言葉にして整理したりします。つまり自分で自分のこころをコントロールできる、「セルフコントロール」の力を伸ばしていくためのトレーニングを行います。

またチームへのアプローチとして、リーダーシップスキルやコミュニケーションスキルを向上させ、チームワーク向上を行います。

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試合場面で有用なスキルに限定するものではなく、競技に対する意欲や対人関係なども含んだ幅広い内容となっています。

これまで心理面や精神面といった要素は、選手の経験や日々の厳しい練習の積み重ねによって強化できるという考えが根強くありました。

近年ではスポーツ科学の発展によってトレーニングの科学的・効率的に行うトレーニング方法が研究開発されてきています。同様に心理面においても科学的根拠をもって強化していくことが大切になってきます。

次回は具体的な心理技法を紹介しながら、スポーツメンタルトレーニングを知っていただきたいと思います。
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参考文献
スポーツ心理学辞典.大修館書店、2008年、日本スポーツ心理学会編.
スポーツメンタルトレーニング教本 三訂版.大修館書店、2016年、日本スポーツ心理学会編.
これから学ぶスポーツ心理学 改訂版.大修館書店、2019年、荒木雅信編著.
スポーツ心理学の世界.福村出版、2000、杉原隆・船越正康・工藤考幾・中込四郎編著.
スポーツ心理学とは.日本体育協会(編)C級コーチ教本、共通科目前期用pp.51-54、1988年、加賀秀夫.

コラムを執筆してくださった「京都トレーニングセンター」のご紹介

京都トレーニングセンターとは・・・?

ジュニアアスリートの強化拠点として 2016 年7月に京都府立丹波自然運動公園内に開所された、京都府立の施設。

競技成績の向上、自己記録の更新。地区大会、全国大会、更には世界へ。
京都トレーニングセンターを利用される方やチームが、それぞれの目標を達成できるよう科学的トレーニング・サポートを行っています。科学的トレーニング・サポートを行うために、筋力測定や体組成測定やフィールドテスト等の各種測定を各個人、各チームのニーズあった測定項目をテーラーメイドにて実施。
各種測定後には、データ返却(データフィードバック)にも注力し、測定結果に基づいたトレーニングあるいは、今後のアプローチについて指導者及び選手と相談しながら実施しています。

また、最大300名の宿泊施設も有しており、京都府立丹波自然運動公園の有する各種スポーツ施設も利用し、スポーツ医科学サポートを利用しながらの合宿も可能な施設です。
詳細はHPhttp://www.kyoto-tc.com/を御覧ください。

2017年当時のCMはこちら

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筆者紹介

大阪体育大学大学院でスポーツ心理学を専攻。修了後は、主にジュニアアスリートを対象とした講習会形式のスポーツメンタルトレーニングの実践や、中高齢者を対象に健康運動を心理面から支援を実施しています。
avatar 相川 昌巳

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