2022.01.31

自己分析と目標設定ってどうするの?スポーツメンタルトレーニングを学ぼう

アスリートのためのスポーツ情報ースポーツ医科学で強くなるー

目次

”トップアスリートの知見を多くの方に伝えたい”という思いから、
スポーツ医科学サポートの専門家集団である京都トレーニングセンター(※詳細は下記)に協力いただき、「スポーツ」に関して様々な角度からコラムを定期的に配信いたします。

京都トレーニングセンターの相川と申します。第七回は「心理的スキルを獲得するスポーツメンタルトレーニングのプログラム」をご紹介します!
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スポーツメンタルの現場では、試合競技中の心理状態を改善・向上したいという悩みや相談を多く受けます。

しかし試合競技中の理想的な心理状態は、日々の練習の積み重ねによって作り出されていきます。技術練習や体力向上のトレーニングと同様にメンタルについてもしっかりと日頃の練習から積み重ねていくことが重要です。

スポーツメンタルトレーニングの基本的な流れ

スポーツメンタルトレーニングの基本的な流れを見てみましょう。

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スポーツメンタルトレーニングは、まず自己分析による自分に対する理解・気づき、目標設定から始まります。

そのうえで各種心理スキルの獲得をし、試合に向けての心理的コンディショニングとして試合に向けて準備をしていきます。そして試合で出た新たな発見や課題を再び自己分析と目標設定として生かしていきます。

心理的なスキル

があります。

今回はイラストの流れに沿って目標設定と自己分析を紹介していきます。

※各心理スキルの詳細はこちらからご覧ください!

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各心理スキルの詳細、具体的な方法はこちら
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1. 目標設定技法

チームや個人の目標は普段から立案しているチーム・学校も多く、新年になり今年の目標を掲げたことと思います。

もちろんスポーツメンタルトレーニングにおいても重要なスキルです。

目標を設定することで「なりたい像」という理想をしっかりと作り、そうすることで今何をすべきか、という課題が明確になります。そしてその目標に向かって効率的計画的なトレーニングを行っていくようになります。

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目標設定は動機づけ(モチベーション)と深く関わっており、目標を達成していくことで自信につながったり、さらなるトレーニングの目標を設定するようになったりと、練習の質が大きく向上するようになっていきます!

目標設定で大切なこと

の5つです。

①結果目標と行動目標

「○○大会優勝」や「自己ベストを出す」など、成績や結果を意識した目標を「結果目標(達成目標)」

特定の結果を導くために必要で具体的な行動や競技内容を重視した目標を「行動目標(プレー目標)」と言います。

この2つの目標はよく山登りに例えられます。

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になります。この2つの違いはどんなところにあるのでしょうか。

「結果目標」

・勝敗やタイムは対戦相手や天候など、自分ではコントロールできない要因などによって結果が変わることがある。

・あまりにも勝ち負けを強調しすぎると、負け=失敗とみなされるため、不安やプレッシャーを引き起こしパフォーマンスの低下をもたらす危険性がある。

「行動目標」

・対戦相手などの外的な要因に影響されず、自分の意識次第で出来る目標。

・成功も失敗も自分次第という統制感が持てる目標。

・試合の勝敗よりもプレーそのものが目標となるためプレーに集中しやすくなる。

 

結果目標も行動目標もどちらも重要です。「結果目標」を達成するために、どのような「行動目標」を立てるか考えてみましょう。

②現実的で挑戦的な目標

スポーツにおける目標の難易度には、最適な挑戦の水準があると考えられています。優しすぎる目標ではやる気が起こらず、反対に難しすぎる目標では達成できるという自信が持てずに努力しなくなります。

努力すればできるかもしれないと感じることができる「挑戦的な目標」を設定することによって、モチベーションを高めることができます。

③客観的な評価のできる具体的な目標

抽象的な目標よりも具体的な目標がパフォーマンスを高めることがこれまでの研究で指摘されてきました。

例えば

「ベストを尽くす」

という目標よりも、

「最初の1㎞を2分台で必ず入る」

「オフシーズンでスクワットの記録を10kgアップする」

などといった具体的な目標を立てます。そうすることで客観的に達成できたかを評価でき、達成するための適切なフィードバックを得ることができます。

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距離、時間、回数など具体的な目標設定は、目標に注意を集中させることに繋がります。

測定可能な目標にすることで、明確に達成可否を振り返ることもできます。

④長期目標と短期目標

シーズン初めに「〇〇大会出場」や「3位以内に入る」といったシーズンの目標を設定することはよくあります。長期にわたる目標は大切ですが、それまでの道のりが長いとあいまいな目標になりやすいです。

短期目標は、達成についてのフィードバックが早期に得られるため、達成感や満足感を得られやすく、長期目標に対するモチベーションを維持することができます。

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長期目標に結びつくような短期目標を段階的に設定することが重要になります!

長期目標は「結果目標」を中心に、短期目標は「行動目標」を中心に考えてみるとよいでしょう。

⑤チーム目標と個人目標

チーム目標はチームワークの形成やチームの試合へのモチベーションを高めるためには重要です。しかしチーム目標のみでは、メンバー1人1人の達成の貢献度がバラバラになる場合があります。

「チーム目標を達成するために、個々が何をすべきか?」といった「個人の目標」を合わせて設定し、達成するために努力をする必要があります。個々の目標の達成が集まり、ひいてはチーム目標の達成につながることを意識しましょう。

もちろん目標を設定するだけで、満足してはいけません!

という一連の流れを繰り返し行うことです。目標の達成によって自信や有能感を高めるものでなければなりません。

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2. 自己分析

みなさんは調子の良かった時あるいは悪かった時の心理状態を観察したことはありますか?人にはそれぞれ最適な心理的ゾーンというものが存在します。
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心理的なゾーンを説明するのに、よく逆U字曲線というものが用いられます。この曲線はあくまで一般論なので全ての選手に適応はできませんが、非常にわかりやすい図になります。

緊張や興奮、覚醒水準などの心理状態が過度に高い場合には、一般的にいう“あがり”の状態。逆に過度に低い場合には注意が欠如した状態となり俗にいう“さがり”の状態となります。

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心理的にも常に安定したパフォーマンスを発揮するために、自分が今どの状態にいるのか、緊張が高すぎる時はどんな時か、など気づくことが大切です。

日頃から自己分析をするのに有効なツールがあります。それは部活ノートと呼ばれる競技日誌やアトレータといったコンディション管理ツールになります。皆さんは普段どんなことを書いているでしょうか?
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日誌を記録する目的

その日の練習や試合内容を書くことはもちろんですが、試合大会でピークパフォーマンスを出すためにあります。コンディションを整えて、最高の状態にもっていくため、いわば試合に向けた準備するための材料になるのが、このノートやアプリになります。

部活ノートはスポーツメンタルトレーニングの1つの技法として用いられており、セルフモニタリング技法とも言います。これは自分自身を客観的にとらえ自分の個性や特徴を知る目的で使います。

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ノートを書く中で起こった出来事を書いただけで終わってしまう選手が時々見受けられます。

少し大雑把な例ですが、「今日は調子がよく、チームの連携もうまく機能し、完勝した。次の試合も調子を上手く整えて試合に臨みたい。」や「最初のプレーでミスをしてしまったことで、上手く気持ちを切り替えられず、焦ったプレーが続いてしまった。次はもっと練習をしてミスがないようにしたい。」といった内容です。

この記録だと先ほど言ったように良かった要因、悪かった要因が何かわかりません。

毎試合を振り返ってみて、

といったように技術面や体力面だけ振り返るのではなく、自分の「こころ」に興味を持って観察してみることです。

そうすると「では再び同じ状況に遭遇した時どうするのか」という様々な技法を使って解決策を考えるようになります。

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その他にもノートを振り返り、

・試合前日の練習量、質
・起床時間、就寝時間
・食事内容

を「調子が良かった日」「調子が悪かった日」でそれぞれ集めてみてください。

良かった日、悪かった日に記録した内容の共通点が見つかるはずです。そのことがまた新たな発見、自己分析につながっていきます。ぜひ日頃の練習から積極的に取り組んでパフォーマンス向上を目指しましょう!

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次回は、メンタル面の強化が必要となった場合、実際にどんなことをすればいいのか?方法などをご紹介します!お楽しみに!
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引用・参考文献
1)日本スポーツ心理学会編(2016)スポーツメンタルトレーニング教本 三訂版.大修館書店.
2)荒木雅信編(2018)これから学ぶスポーツ心理学 改訂版. 大修館書店.
3)日本スポーツ心理学会編(2008).スポーツ心理学事典.大修館書店.

コラムを執筆してくださった「京都トレーニングセンター」のご紹介

京都トレーニングセンターとは・・・?

ジュニアアスリートの強化拠点として 2016 年7月に京都府立丹波自然運動公園内に開所された、京都府立の施設。

競技成績の向上、自己記録の更新。地区大会、全国大会、更には世界へ。
京都トレーニングセンターを利用される方やチームが、それぞれの目標を達成できるよう科学的トレーニング・サポートを行っています。科学的トレーニング・サポートを行うために、筋力測定や体組成測定やフィールドテスト等の各種測定を各個人、各チームのニーズあった測定項目をテーラーメイドにて実施。
各種測定後には、データ返却(データフィードバック)にも注力し、測定結果に基づいたトレーニングあるいは、今後のアプローチについて指導者及び選手と相談しながら実施しています。

また、最大300名の宿泊施設も有しており、京都府立丹波自然運動公園の有する各種スポーツ施設も利用し、スポーツ医科学サポートを利用しながらの合宿も可能な施設です。
詳細はHPhttp://www.kyoto-tc.com/を御覧ください。

2017年当時のCMはこちら

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