鳴門渦潮高等学校
DXハイスクールが実現する次世代スポーツ教育。鳴門渦潮高校のデータ×アスリート育成
鳴門渦潮高等学校/スポーツ科学科主任 中嶋 宏彰
<チームの情報>2025年11月現在
学校全体での導入
Atleta導入時期:2025年4月
スポーツ教育DX:学校全体で進めるデータ活用モデル
Q:今年度DX加速化推進事業※の採択校に選ばれましたが、具体的にどのような取り組みをされているのかを教えていただけますか。
※2024年度から開始された、文部科学省による「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)
「生徒が自身の課題を解決するために、デジタルツールを駆使して学習環境を変えていく」ことを前提として、本校ではさまざまな取り組みを進めています。
具体的に導入した機器・ツールとしては、
・コンディションツールとしての『Atleta』
・『S-PLAZAモーション』(マーカーレスで動作分析を行うツール)
・『S-PLAZAチーム』(チームプレー分析ツール)
・『GPS』(運動量測定)『Polar心拍センサー』
などがあります。これらのツールを活用し、試合データや動画分析に加えて、栄養・トレーニング計画を統合的に管理する取り組みを行っています。トップアスリートに近い環境を整備することで、競技力の向上と教育DXを両立させています。
Q:今年度から『Atleta』を導入いただきましたが、導入の背景を教えてください。
当初は女子ラグビー部で別のコンディション管理ツールを使用していましたが、運用する中で「栄養面のデータ不足」や「食事管理まで一元化して改善したい」という課題が明らかになりました。そこで、カロリー計算や栄養分析機能を備えた『Atleta』の方がチームに適していると感じ、採用しました。
Q:食事面については当時から気にされていたのでしょうか。
はい。食育研究の一環として、徳島大学の教授と「ビタミンD」と「筋肉量」に関する共同研究を行っており、その際に選手全員の食事データを取得しました。その結果、「朝食を抜く生徒が多い」「エネルギーや水分の摂取量が不足している」などの課題が浮き彫りになりました。データを基に、食事・トレーニング・パフォーマンスを結びつけて改善していく必要性を感じたことが、『Atleta』導入の大きなきっかけになりました。
Q:『Atleta』で取得したデータはどのように活用していますか。
GPSデータと栄養データを組み合わせることで、「走れない原因」を科学的に分析するなど、仮説検証型のアプローチを進めています。また、水分摂取と尿の濃さ・量、血液検査の結果などもあわせて活用し、水分不足がパフォーマンスに与える影響を研究しています。
研究結果、原文はこちらから
データ活用で変わる競技力:アスリート育成の新スタンダード
Q:今後の目指す姿を教えてください。
さまざまなツールで得られた客観データと、『Atleta』で記録する主観データを組み合わせることで、選手自身が「自分の身体の状態を見える化し、自己管理する力」を養ってほしいと考えています。単に「食べれば良い」や「痩せれば良い」「練習すれば良い」ということではなく、体調・栄養・パフォーマンス、さらには月経周期なども含めて総合的に理解することが重要です。その中で「感覚と実際のデータのズレ」を把握できる力を身につけることが、アスリートとしての成長につながると思います。
Q:単なる記録や管理ではなく、選手の“気づく力”そのものを育てていきたい、ということですね。
そして、こうした経験を通してトップアスリートとしての能力と資質を高めるだけでなく、将来的にはそれを他者に伝えられる人材になってほしいと考えています。言われたことをやるだけでなく、部活動や学科での学びを通してスポーツの理解を深め、スポーツの面白さを感じながら卒業してくれることを願っています。