聖和学園高等学校 女子サッカー部
「美しくしなやかに」「栄光に近道なし」の理念を掲げる聖和サッカーの哲学とは(聖和学園・サッカー)
聖和学園高等学校 女子サッカー部/曽山 加奈子監督・佐々木好人コーチ
<チームの情報>2022年7月現在
部員数:部員57名
指導者数:4名(総監督、監督 コーチ2名)
Atleta導入時期:2019年8月
<チームの主な成績>
・全国大会優勝 4回(高校選手権3回)
・全日本女子サッカー選手権大会出場13回
・全日本女子選抜サッカー選手権大会 準優勝1回、3位1回
・全日本高等学校女子サッカー選手権大会 27年連続出場 優勝3回、準優勝2回、3位7回
チーム理念「美しくしなやかに」「栄光に近道なし」をもとに、価値観を共有できている
Q:まずはチームについて教えてください。
└創部から38年、技術の追求をベースに、見ている人がワクワクするようなサッカーを志向してきています。お陰様で選手権大会には連続出場できていますが、それだけではなく、「美しくしなやかに」「栄光に近道なし」といった創部をされた国井精一先生の理念やプライドを大切に、活動を続けています。(佐々木コーチ)
Q:「競技としての目標」以外の目標もお持ちなのでしょうか?
└勝利を目指すことは競技者である以上もちろんですが目標は全国大会優勝だけではありません。選手たちが社会人になったときに、「高校時代日本一になりました」だけではない何かを身につけてもらいたいといつも話をしています。競技である以上、勝ち続けることは出来ませんよね。それは彼女たちが卒業後に身を置くことになる競争社会も同じだと考えています。高校時代のサッカーを通じて、競争社会を上手に生き抜く力みたいなものを身につけてほしいです。(佐々木コーチ)
Q:その部分は選手たちにどのようにお話されていますか?
└「自己決定力」の話をよくします。選手たちは越境で来ている選手も多く、その選手たちは皆「聖和のサッカー」を目指してきてくれています。選手たちには、必ず入学前に練習に参加してもらい、面談をし、自分で意思を固めてきてもらっている。そのプロセスを経ることで在学中ちょっとやそっとのことでは折れない心を育めると思っていて、これはゲーム中に「誰かがやってくれる」ではなく「自分がやる」という積極的な判断を生む土台にもなっています。(佐々木コーチ)
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Q:『Atleta』を普段どのように活用されているのか教えてください。
└使い始めの頃、コロナで選手全員実家に帰ることになった時期に、みんなとの毎日のコミュニケーションに活用できました。そこからチームの情報共有ツールとして定着しています。(曽山監督)
指導者に直接は言いづらいけど、記録して残しておけば言ったことになるよね、というバランスが絶妙です。私としては、「自分自身を客観視する」ためにピッタリなツールだと思っています。「俯瞰して自分を見る能力」とでも言いましょうか。「アレをしながらコレもする」という、今でいう「マルチタスク」について、先代の国井先生は早くから気づかれていてチームとして、サッカーの感性や判断力を磨く上でも土台となることなので一貫して言ってきました。それを『Atleta』に日々の記録として残しておくと、小さな改善ができる、同じ失敗を繰り返さずに済む、といった効果が生まれていて、みんなあらゆることを同時並行でこなす力がどんどん身についている気がしますね。女性の方がこの力は元々持っているんですよね。(佐々木コーチ)
Q:お二人は『Atleta』をよくみられているんですか?
└もうクセになってますね、何かない限り毎日その日の選手のコメント読む、という感じです。特に試合に出ていない選手などは遠慮して直接言ってこないようなことを、コメントに書いておいてくれたりしていて、グラウンドとは違った気づきがあります。(曽山監督)
私もそうですね。これを読むと、選手の深層部分に迫れる感覚があります。日々の習慣としてはその日のデータをみますが、例えば選手に異変があった、何か問題が発生した、という時に見逃していたSOSのサインはなかったのか、ということを遡って確認することもあります。
あとは、曽山先生のレスポンスが早く、年頃の女子選手たちの強い承認欲求が満たされていますね。(佐々木コーチ)
Q:続けてきてどんな変化が見られますか?
当初、「今日はこういうこと書いてね」というテーマを指定して書いてもらうこともしていました。ただ、定着してくると選手個々のフォーマットみたいなものが決まってきて、それも面白いですね。それから書く内容が1人称→2人称→3人称と変化していきます。最初は「生理予定日を把握して体調管理に活かそう」「食事の栄養バランスを把握して足りないものを補おう」という個人のことから始まりますが、ある程度自分自身のことがわかってくると、自然に他人に目が向く、というポジティブな変化を感じています。あとは、教員にとってのモチベーションになる、というのも大事な点です。私たちは、「こちらから指導する」という感覚よりは、同じ景色を見たいという想いを共有して「一緒にチーム作りをする」という感覚で選手たちに接しています。選手のコメントからそれが伝わっていることが感じられると、非常にモチベーションになりますね。(佐々木コーチ)
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Q:トレーニングと授業以外の時間はどのように過ごされていますか?
└選手と1対1で話す機会を意識的に作ったりして他愛もない会話や時事ネタに対する意見を振ってみるなどいろんな話をするようにしています。最近の選手たちは感受性豊かで、情報の取捨選択にもセンスを感じます。話題の本の内容を要約したYoutubeの動画を何度も見てコンセプトをつかみ、学んだことを普段の生活にすぐに活かすというようなセンスがあります。大人の私から見てもそんな言葉よく知ってるな、と感心させられることもあります。「オンラインの要約だけ見て本を読んだ気になるのは…」と眉を顰める意見があることも承知していますが、私はそれでも、本を買って満足するよりは、情報収集という意味でよほど良いと思っています。(佐々木コーチ)