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近江高等学校 柔道部

『自主性』は『放置』ではない。『選手主体なチームづくり』ができている理由(近江・柔道)

近江高等学校 柔道部/向江村 和也氏

<チームの情報>2022年9月現在
部員数:21名
指導者数:2名(監督、コーチ)
Atleta導入時期:2019年4月
※CLIMB DB 2017年9月〜

<チームの主な成績>
2022年インターハイ (7年ぶり20回目)
団体ベスト16、個人100kg ベスト16・100kg超ベスト16
→団体戦20回目、個人戦としては34年連続インターハイに出場

僕が彼らを下から支える形のチーム。24時間365日柔道の指導法を勉強。


Q:『Atleta』導入のきっかけを教えてください。
└もともとトップダウン的な指導はしたくなかったので、上に指導者がいて下に選手…ではなく、僕が彼らを下から支える形のチームを作りたかったんですね。そこで選手一人ひとりとの対話を大切にしたくて、部員が少なかった頃は練習後に一人ひとりに話す時間を確保していました。しかしありがたいことにどんどん部員が増えてきまして、物理的にゆっくり話すことが無理になってきました。また柔道ノートを始めて毎日日誌を書かせる取り組みをしたんですが、なかなか定着せずせっかく選手たちが書いてきても、日々の業務でノートを見られずに返してしまう日もあったりして、彼らとのキャッチボールがかなり負担になっていました。
効率よく、帰りの電車とか、ちょっとした空き時間にできないかなと考えていた時にこのお話をいただいて、ばっちり自分がやりたいこととハマったのですぐに導入させてもらうことにしました。今の子達はスマホの扱いは一流ですから。(笑)

Q:『Atleta』を導入して、チームに何か変化はありましたか。
└大きく2つ、『Atleta』のおかげでというものがあります。
1つはその日の全員の活動で感じたことを把握できること。会議や出張で練習が見られない時や、コロナの影響でどうしても全員を試合会場につれていけない時に、見られなかった選手に対してもアドバイスができるので、本当にありがたいです。
2つ目が、選手自身で発信できる力が身についたなと感じます。高校生って基本部活であっても授業であっても教えられる側だと思うんです。つまり受信する方が多い。でも『Atleta』があると嫌でも発信しないといけないので、そうすると最初2〜3行しか書けなかった子も続けることでかなりの文章を書けるようになって、また書けるようになることで次に発言できるようになるんです。授業中でも率先して発言できるようになったり、行事ごとでは積極的にクラスの中心になれたり、困っている人へ進んで声掛けができるようになったり。

Q:『Atleta』を続けることで発信側に回れるようになるというのはとても良い傾向ですね。
└進路指導にも役立っていて、『Atleta』のおかげで小論文とか面接は指導しなくても余裕なんですよ。学生時代は受け身でも過ごせますけど、社会に出ると発信しないとお給料もらえませんからね。社会に出てからの力にも繋がっていると思っていて、柔道ってプロがあるわけでもないので社会に出たら柔道着を脱いで仕事しないといけないですよね。柔道着脱いだ後に何を残すかを考えた時、この発信力というのは重要だと思っています。

我々は強豪チームだとは思っていませんし、自分たちが天狗になって一回でも満足したら終わりだと思っています


Q:『Atleta』では高い入力率を長きに渡り継続できていますね。
└入学直後の1年生はなかなか定着しないんですよ。疲れて入力せずに寝てしまうとか、書いても短い文章で終わるとか。そんな時は翌朝呼び出して指導しているので、最初のうちはこちらもかなりエネルギー使うんですけど、夏を超えた辺りからはみんな習慣化できてきます。選手には『言われたから書く』なら書かなくてもいい、自分のことを見て欲しいと思うなら書きなさいと伝えています。具体的には「近江高校柔道部に入りたくて入って、自分が強くなりたいという思いで来たんだよね。僕自身どうしても全員に3年生がメインの指導になってしまうから1年生は手が回らない部分はあるけど、それでも全員を見てあげたいと思っていて、そのためのツールが『Atleta』だからね」と。

Q:コメントの内容は書き方などルールを設けたりされているのでしょうか。
└指示していませんが、毎日のミーティングでの内容を書いていると思います。柔道の技術的な部分はあまり指導していなくて、「今日合同練習できたのは相手選手が時間とお金をかけて来てくれたからだよね」とか、感謝の気持を持つためのミーティングというものを毎日しているので、そのミーティングの内容がコメントには多いですね。技術的なことは小中学校時代の先生方がとても丁寧に指導してくださっているので、そういう心構えを持たせる指導をすれば、技術的なことは勝手に成長していってくれます。

Q:技術指導以外に時間をかけているのですね。強豪校のイメージとは真逆でした。
└我々は強豪チームだとは思っていませんし、自分たちが天狗になって一回でも満足したら終わりだと思っています。だからむしろ、周りの人に支えてもらっているとか、練習をサボるというのは授業料払ってくれて弁当作ってくれている親御さんに失礼だよとか。技術的な話とか試合に勝てば良いみたいな話はしません。上級生に上がっていくごとに周りの人に対する想いは身に沁みて分かってくるんじゃないかなと思います。

『自主性に任せている』ってチームのほとんどは『自主性』ではなく『放置』


Q:発信力が付いてきたからこそ、選手主体のチーム運営ができている気がします。
└そこはあると思いますよ。よく『自主性に任せている』ってチームはあると思うんですけど、そのほとんどは『自主性』ではなく『放置』だと思うんですよね。たとえば試合で負けた時に「生徒が自主的にやってきた結果ですから(僕のせいじゃないです的なニュアンス)」ではなく、その結果はやはり監督が責任を取るものだと思うので、生徒に任せられるレベルに到達するまでの過程は徹底して指導します。生徒の頭の中に「監督だったらこうするだろうな」という「プチ監督」を作るという作業です。その自主性に持っていくためのエネルギーが相当必要で、いきなり「生徒主体でやります」は無理だと思うんです。選手自身で考えられるところまで持っていくためには指導者側の努力が必要で、それが定着したところでようやく「自分たちでやってみなさい」と言えるのかなと思います。

Q:『Atleta』での発信を続けて主体的に動くことで向江村監督に見てもらえていることの実感を得られる、だから頑張れるんじゃないかなとお話を聞きながら感じました。
└そうかも知れません。「見てるよ」ということは常に言っていますし、『Atleta』の入力内容だけではなく練習中もめっちゃ生徒のことを見ていますから。昨日と違うとことか、眉毛剃ってるとか、速攻で分かるんで。その気づき力は他の先生よりも自信があります。

Q:最後に、今後の目標や取り組みを教えてください。
└大会の競技目標となるともちろんみんな日本一を目指していて、でも選手全員が優勝することは大会枠を考えても無理ですよね。だから、そこよりもまず3年間を経て勝った負けた関係なく満足して卒業してもらう。そしてその子たちが社会に出て色んな所で活躍できる選手にするというベースは持っていて、そこは変えたくないと思っています。周りから応援される人、チームであること、「最強じゃなくて最高のチームを作ろう」といつも言っているので、そこを大前提に日本一の選手が出れば良いなと思っています。そのためにもこれからも止まらず、進化し続ける柔道部にしたいです。