仙台育英学園高等学校 女子駅伝部
「感じる力」がチームを変える。Atletaを通じて実現した“自主性×指導”のかたち(仙台育英・陸上競技)

仙台育英学園高等学校 女子駅伝部/釜石 慶太氏
<チームの情報>2025年6月現在
選手数:19名
指導者数:1名
Atleta導入時期:2018年3月
<チームの主な成績>
2024年(第36回)全国高等学校駅伝競走大会 2位
2023年(第35回)全国高等学校駅伝競走大会 2位
2022年(第34回)全国高等学校駅伝競走大会 2位
2021年(第33回)全国高等学校駅伝競走大会 優勝
「紙の日誌」からの転換。リアルタイムで選手とつながるための決断
Q:長い間Atletaをご利用いただいていますが、導入のきっかけから教えてください。
└就任当初は、自分で練習日誌のフォーマットを作って、それを印刷したものを選手に書かせていました。ただ、確認が翌日や数日後になることも多く、リアルタイムで選手の様子が見られないことに不便さを感じていました。そんな時にスマホから管理できるシステムがあると紹介してもらったのが、Atletaとの出会いです。
Q:日誌を紙に書く良さもあると思いますが、アプリに変えてみてどうでしたか。
└最初は「高校生にお金をかけさせずに紙に書かせたい」という気持ちもありましたが、練習日誌は選手にとって自分の過去を振り返るためのツールであり、指導者にとって重要なのはフィードバックの速さだと思ったので、その日のうちに状態を把握できることを優先し、結果的に導入に至りました。
“感じる力”を“言葉にする力”へ。見えない成長が数字に変わるとき
Q:寮生活だと比較的密なコミュニケーションが取りやすいと思いますが、それでもアプリを使う意義はありますか。
└寮は生徒たちにとって“家”ですから、四六時中ミーティングや面談ばかりだと、かえって負担になってしまいます。距離を保ちつつも必要なタイミングでつながれるのが、アプリの良いところです。特に、男子教員として女子生徒と接する際に言いづらいことも、アプリなら書いてくれることがあります。
Q:そういった点で、コンディションコメントが一番重視されているポイントですか。
└そうですね。選手には「朝から晩までの気づきや感じたことを、全部書きなさい」と伝えています。1人あたりのコメント文字数はかなり多い方だと思います。
こちらから文字数の指定はしていないのですが、“感じる力”を育てて、それを“言葉にする力”に変えていく。そのプロセスの重要性は日頃から伝えているので、その結果だと思います。感じたことを言葉にできなければ、誰かに共有したり指示を出したりすることもできない。それは競技でも、社会に出ても必要な力なので、言語化のトレーニングとしても価値があると考えています。
Q:競技の記録やパフォーマンスに直結したような、具体的なエピソードはありますか。
└Atletaを使って感じるのは、練習を順調に積み重ねて、練習消化が良くなった選手は自然と肉体的な疲労も精神的な疲労も少なくなってきて、モチベーションも高い状態で安定します。モチベーションに関する項目も、最初は「普通」だったのが、調子が上がってくると「高い」に変わっていって、目に見えて数字が良くなっていきます。
「去年のインターハイ前はどうだったかな」とか「全国高校駅伝のときは体重が何キロだったかな」っていうのも、すぐに振り返れるので、本当に便利です。
「今日は休もうと思います」と言える選手が育つチームへ
Q:怪我予防の観点で、Atletaや日々の取り組みが役立ったと感じた場面はありますか。
└“フリー時間”の使い方ですね。選手が自分の弱点を見つけて、それに対する補強を考えて実行し、継続できる選手は明らかに怪我が減ってきています。「最近走行距離が少ないから少し増やそう」とか、「ここが弱いから補強しよう」と、自分で考えて動けるようになってきています。
また選手から、「明日フリーなので〇分走ろうと思うんですけど、いいですか?」とか、「今日は思い切って休もうと思うんですが」といった相談をよく受けます。中学までは「これをやれ。あれをやれ」と指示されるだけだったと思うので、最初は自分で考える引き出しが少ないのですが、迷いながらも自分で考えて質問してくるのは、非常に良い傾向だと思います。
Q:高校のチームはトップダウン型の指導が多い印象もありますが、どう思われますか。
└正直、陸上界はいまだにトップダウン型が多いと思います。でも、監督に言われたことをやっているだけでは、大学や実業団では絶対に通用しません。
もちろん高校では日本一を目指しますが、私の根底にあるのは“大学・実業団で活躍してほしい”という思いなので、全てを管理すると言うより、“自主性”のなかにある“管理”、そして“管理”の中にも“自主性”があるという感覚で、両者を使い分けて指導しています。
Q:最後に今後の目標を教えてください。
└目先の目標は「10年連続で全国3位以内に入ること」です。私は東洋大学出身ですが、東洋も箱根駅伝で11年連続3位以内という記録を持っています。だから、自分が指導者として目指すのもそこですね。
もちろん、優勝も目指していますが、「1回優勝するチーム」より、「ずっと強くて、ずっと応援されるチーム」でありたい。それが一番の目標です。